連載「日々発見」
今号から向谷地生良さんのコラムが始まる。向谷地さんは、浦河べてるの家の設立者の一人。べてるの家の日常から感じられることを綴ってもらう。
北海道の東南、襟裳岬にほど近い太平洋岸沿いに私が住んでいる浦河町(人口1万500人)があります。私は、そこに暮らしてちょうど今年で30年が経ちます。この町で生まれた「べてるの家」は、統合失調症などを体験した若者有志と共に興した地域活動拠点で、そこから会社や社会福祉法人、NPOなどが立ち上がり、さまざまな障害を持った100名ほどの当事者が活動に参加しています。
この私たちの活動を20年近くもサポートしてくれている支援者の一人に地域づくりアドバイザーの清水義晴さん(新潟市在住:えにしや屋代表)がいます。私たちが、どん底状態のときに私たちの活動に着目し「将来、浦河は精神保健のメッカと言われる時代が来ますよ」とおっしゃってくれた千里眼の持ち主です。その清水さんが5年前に出された本のタイトルが『変革は、弱いところ、小さいところ、遠いところから』(太郎次郎社)でした。日本の閉塞状況を打ち破る新しい実践は、日本の辺境で始まっているというのがこの本の趣旨で、「ただの人が社会を変えていく!」という目線で、全国各地のユニークな地域づくりのとり組みが紹介されています。この本の冒頭を飾ったのが「べてるの家」の実践です。
読者コメント