『みまもることば』著者:石川憲彦/出版:ジャパンマシニスト社/刊行:2013年/連絡先:℡0120-965-344

 新聞社に勤める前、私は2年ほど、公立中学校で相談員の仕事に就いていました。基本的には何気ないおしゃべりをするだけ、ゆるゆるとした場所ですが、休み時間のたびにやってくる生徒もいました。打ち解けてくると、自分の話をし始める生徒もおり、その多くは周囲の大人や友人から、心ない「ことば」によって傷つけられた経験談でした。そんなとき、私の頭の中には決まって「寅さん」が現れるのです。「それを言っちゃあ、おしまいよ」って。
 
 「どうせ俺なんかダメだよ」。ある男子生徒がつぶやきました。授業のボイコット、喫煙、ケンカが絶えない子でしたが、それより私が気になったのは、彼の周囲を見まわしたとき、あたたかい「ことば」をかけてくれる大人がじつに少ないということでした。ダメな点ばかり指摘され、すぐに改めろと注意されるだけ。彼に向けられる「ことば」の大半は、いわば「剣」のようなもの。でも「絆創膏」にも「栄養剤」にもなる、それも「ことば」が持つ力ではないかと考え、私なりの試行錯誤をくり返していたことを思い出します。


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