父親に懲役3年の実刑判決
一九九六年一一月、長男(当時一四歳)を金属バットで殴るなどして、殺人罪に問われた父親(五三)にたいし、東京地裁は四月一七日、懲役三年の実刑判決(未決勾留日数四〇〇日を刑に算入。求刑懲役五年)を言いわたした。この事件は、東大卒の学歴をもち、出版社やアルコール依存症のデイケアで働いた経験もあるまじめな人柄と見られる父親が、なぜ長男を殺すことになったのか、長男はなぜ家庭内暴力をくりかえすようになったのか、この悲劇を防ぐにはどうしたらいいのかなどについて、裁判所がどこまで踏みこんだ判断を示すか注目を集めた。
認定した事実 被告人は、中学一年生ころ始まった長男の家庭内暴力に悩み、本を読むなどして、暴力に抵抗せずに要求を受け入れて改善しようとした。暴力が原因で娘と妻が順次別居、九六年六月ころから長男と二人暮らしに。九月ころ「自分か妻が殺されるかもしれない」「自分が長男を殺すかもしれない」と思い悩み、金属バットを購入。一一月五日夜長男に殴られ、翌朝起こすよう指示されたが、翌六日午前七時過ぎ、寝ている長男の頭を金属バットで殴り、なわとびロープで首をしめて殺害した。
弁護側は、父親は、長男の暴力を受け入れ、耐えつづけることによって、複雑型PTSD(心的外傷後ストレス障害)に陥り、長男の暴力から離れることができない心理的に強くしばられた状態になり、犯行当時は追いつめられて、苦しさから逃れるため、ほかの方法を選択する判断能力が非常に低下した心神耗弱(しんしんこうじゃく)状態で、完全な責任能力がないとして、刑の軽減を主張した。
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