連載「不登校の歴史」
90年代半ば、子どもたちをめぐってどんな状況があったのだろうか。もう少し、『僕らしく君らしく自分色』(教育資料出版会)の手記より拾ってみる。どの子も、学校に行かなくなったり、行けなくなったりした経緯は、つらいことがたくさん重なっている。前号で一部紹介したが、一人ひとりちがうし、紙面もないので割愛するが子どもたちが、学校に行かない理由のかげには、つらい目にあったから、というだけではないことがいろいろあるのである。
手記を書いたうちの一人、A子は述べる。「いじめがあったからというのも行かない理由の一部だが、それも少しちがう」と。かんたんにいえば、「私は学校に魅力を感じない」というのだ。さらに、A子の手記を見てみよう。「私は学校でいま、自分がやってみたいことができるのか考えたとき、何もできないような気がします。5分のあいだに体育館から教室にもどってそこで制服に着替える。そのかわり廊下は走ってはいけない。そんな中で自分が疑問に思ったことを先生に向けられるでしょうか? 先生は聞いてくれるのでしょうか? 生徒という立場で先生に聞けるだけの余裕があるのでしょうか? 『先生』という、その部屋で一番権力をもってそうな、いかにも大人ぶってる人に、自分がいま考えていることを私はきっと言えません」。
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