連載「精神現象」
遺族である本村洋氏の話の中から、私の記憶に残っている部分を、もう一つ書き留めておこう。本村氏は、ある米国の犯罪加害者が死刑と直面して、はじめて真に謝罪することができたようすを語っていた。だから、死刑は贖罪の心をもたらすのだという。記者会見でも同じく「被告人に死刑判決が下り、反省し慟哭することを願っている」と述べていた。
だが、私が被害者の遺族なら、たぶん、そうは考えないだろう。加害者が自らの死を目前にして罪を悔いようが、死罪を免れて更生しようが、私にとってはどうでもいいことだ。ただ、亡くなった私の愛しい人が成仏してほしいと、ひたすら願うだけだ。
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