不登校新聞

329号(2012.1.1)

新年の声「震災から人生をかえりみた年」

2013年05月23日 15:05 by kito-shin
2013年05月23日 15:05 by kito-shin


 今年はたいへんだった。"たいへん”という言葉しか思いつかない。そして、〈大きく変えられた〉。

 北カリフォルニアに住んで13年。数年に一度、自分の仕事(個展)のときぐらいしか、日本には帰らない。それなのに3月11日、私は日本にいた。

 今回は個展後、のんびりとする予定だった。友人と新宿で展示会に行き、路上に出る直前、地震が起きた。こんにゃくのように揺れている新宿高層ビルの下、信号灯はアメのようにグニャリとねじれた。その光景はまるで映画のセットのようで現実感がまったくなかった。その後、5時間近く歩いて自宅に着き、爪は剥がれてしまった。その途中、さまざまな人に会ったこと、2日後に予定通り成田空港から飛行機に乗れて帰れたこと、空港での非常事態のようすやドイツからの頼もしい援助チームの到着などの断片の記憶は東北の被害を考えるとあまりに小さいことかもしれない。でも、あの日、日本にいたことで私は大きく変えられたと思っている。

 アメリカに着いてから、義援金集めなどのイベントをいくつか企画したけれど、それで驚いたことは世界中の人が参加してくれたことだ。スーパーのレジの人 が「日本人?」と聞いてハグしてくれたこと。イスラムの人が日本人キリスト教会にお悔やみを伝えてくれたこと。バザーを手伝ってくれたヒンズー教のインド 人、フィリピンの人、台湾の人……、人種をこえて、宗教をこえて、たくさんの人が愛を伝えてくれた。その愛に私は変えられたと思っている。
この続きは1ヶ月無料のお試し購読すると
読むことができます。

関連記事

「あなたは誰より大切だよ」不登校を経験した4児の母が、あのころ一番欲しかった言葉【全文公開】

624号 2024/4/15

「僕、先週死んじゃおうかと思ったんだよね」小5で不登校した息子の告白に母親が後悔した対応

623号 2024/4/1

「原因を取り除けば再登校すると思っていた」不登校した娘の対応で母がしてしまった失敗から得られた気づき【全文公開】

623号 2024/4/1

読者コメント

コメントはまだありません。記者に感想や質問を送ってみましょう。

バックナンバー(もっと見る)

624号 2024/4/15

タレント・インフルエンサーとしてメディアやSNSを通して、多くの若者たちの悩み…

623号 2024/4/1

就活の失敗を機に、22歳から3年間ひきこもったという岡本圭太さん。ひきこもりか…

622号 2024/3/15

「中学校は私にとって戦場でした」と語るのは、作家・森絵都さん。10代に向けた小…