6人に1人の子どもが貧困、市民ら500人が参加
「子どもの貧困対策法」の制定を求める市民集会が5月18日、東京・渋谷区の代々木公園で開催され、市民ら500人が参加した。子どもの貧困率削減に向けた数値目標の導入の意義を踏まえ、今国会内での成立を訴えた。
集会では遺族家庭の母親や高校生らが登壇。高校3年生の女子高生は6人家族。不治の病の父親に代わり、母親が一家を支えている。「金銭面で進学できるかわからないのに、受験勉強する意味があるのかどうかわからなくなるときがある。一人でも多くの子どもが自分の夢を追いかけられる環境をつくってください」と語った。
「なくそう! 子どもの貧困全国ネットワーク」共同代表の湯澤直美さんは「1985年に10・9%だった子どもの貧困率は現在15・7%。この事実をどれだけの人が知っているでしょうか。これまでのやり方を転換する必要があり、そのためには貧困率削減を盛り込んだ法制定が重要だ」と語気を強めた。
子どもの貧困対策 与野党のちがいは
子どもの貧困対策をめぐっては、与野党とも今国会での法案成立を目指している。中身はどうちがうのか。自公案では「子どもの将来が生まれ育った環境で左右されない社会の実現」を理念に据えた。学資援助、生活相談のほか、親に対する就労支援策も盛り込む。
民主党案では「貧困の世代間連鎖を断ち切ること」を目的とし、自公案と同様、教育支援や親の就労支援の拡充を盛り込んでいる。
類似点も多いが、異なるのは貧困率削減と年齢制限の扱いだ。貧困率削減について、自公案では大綱に明記するにとどめているのに対し、民主党案では法律に盛り込んだ。一方、自公案では年齢制限を定めていないのに対し、民主党案では一部の施策をのぞき、20歳未満の子どもに対象を規定している。
2009年の厚労省発表によれば、6人に1人の子どもが貧困状態に置かれていることになる。さらに、ひとり親世帯にかぎると、50・8%にまで跳ね上がる。OECD35カ国中でも最悪の数字だ。なかでもとくに深刻なのが母子家庭。あしなが育英会の調査によれば、遺児母子家庭の平均年収は1998年の201万円から、2010年には113万円まで減少している。
こうした動きがある一方、政府は生活保護法の改正も同時に進めている。改正案では申請基準の厳格化などを盛り込んでいることから、申請を妨げるいわゆる「水際作戦」がさらに強まるのではないかと指摘されており、「自立生活センター・もやい」や「日本弁護士連合会」などが廃案を求めている。生活保護は今年8月から減額されるが、そもそも生活保護の基準は就学援助制度や最低賃金の基準にも影響を与えるものであり、貧困の解決とは、かんたんに切り離せない問題だ。
子どもの貧困は大人の貧困、ひいては社会全体のセーフティネットの貧困でもある。
個人でなく社会の問題である以上、安易な自己責任論に帰結することなく、子どもが育つ豊かな土壌をどうつくるか。党の垣根を越え、「子どもの命は、日本の未来」という視点に立った包括的な取り組みが必要だ。(小熊広宣)
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