不登校新聞

418号 2015/9/15

【公開】「多様法案」へのおもな意見

2016年07月21日 12:49 by kito-shin
 「義務教育の段階に相当する普通教育の多様な機会の確保に関する法律案」(以下・多様法案)に関しては、これまで多様な意見が出されてきた。9月2日に提示された条文案の附則には「施行より3年後に見直す」ことが盛り込まれた。仮に法案が成立したあとでも、よりよい制度を求めた議論は続く。議論が蓄積されるよう紙幅の許すかぎり、意見を取りまとめた。なお、夜間中学校、外国籍への意見なども多々あるが、今回は不登校・ひきこもりの専門紙として、不登校、ひきこもりにかかわる意見のみ取り上げた。(編集部)

◎フリースクール、親の会関係者から賛同が多かった法案のポイント
 
■国籍、年齢に関わりなく多様な教育の機会を保障すること。
■フリースクール、夜間中学校への支援が必要であること。
■条文(基本理念)に「子どもの権利条約の趣旨に則り」という一文が盛り込まれたこと。
■条文(基本理念)に本人の「意思を十分に尊重し」という一文が盛り込まれたこと。
■基本指針の策定・変更には「民間団体その他の関係者の意見を反映させる」という一文。
 
◎「多様法案」全般に関わる意見
 
■学校教育以外の教育を認める、戦後初で画期的な法案。名称に「多様な」という文言も入っており、学習の場に「自宅」も含まれたのも、すごいこと。法案の理念も、一人ひとりの子どもの学習の権利を保障しようというもの。支援は子どもや家庭が希望すれば受けられる。理想的とは言い切れないが、現在の学校中心主義を考えれば社会を変えていける法案。(フリースクール全国ネットワーク・奥地圭子)
 
■小・中・高あわせて20万人の不登校は学習権を奪われた状態で放置され、教育行政はその責任を問われてきた。法案は学校外の学びを普通教育に参入させるための基本理念を定めた理念法。当然求められるべき制度改革の一つ。(多様な学び保障法を実現する会・喜多明人)
 
■多様な教育機会を保障するといっても、より成果主義的な方向を強めていくことになるのであれば、かえって子どもは逃げ場を失う。また、地域で孤立する不登校の家庭は多い。その状況のなかで自宅までを範囲として多様な学びを認めるということに無理がある。(フォロ・山下耕平)
 
■どれだけ子どもの権利保障という発想のものになるのか疑問。法案からは自由に選択できる制度だと解釈できない。(弁護士・石井小夜子)
 
■従来通り、学校復帰への取り組みは推進するが、それでも学校に適応できない場合の特別な措置としての法案であることを明確にしていただきたい。(教育委員会関係者)
 
◎「個別学習計画」全般に関わる意見
 
■教育委員会はどんな基準でなにを評価し「義務教育の代替」を認定するのか。場合によっては家庭、フリーススクールへの教育行政が介入する余地が生まれる。(京都精華大学教員・住友剛)
 
■個別学習計画による学習活動の実施により、教育委員会が義務教育の修了を認定する際、どのような基準で評価するのかが漠然としている(法案第18条)。そのため現場に混乱が生じる恐れもあり、基準を明確に示してほしい。(教育委員会関係者)
 
■息子が学校に行けなくなってから、本人も私も「勉強だけは」と焦りました。そのことで母親として息子を追い詰めてしまったという自覚もあります。個別学習計画があったら、きっとそれに飛び乗って、子どもをより追い詰めてしまっていたんではないかと思っています。(母親)
 
■これまで居場所が実践してきた多様な教育が認められるのか。教育の幅が、どう担保されるかが重要。(長野県次世代サポート課・竹内延彦)
 
■個別学習計画にかかる条文は「受けなくてもよい」という任意性を基本においた条文。任意規定である以上、行政介入だと理解するのは早計。しかし、心理的な負担がこれ以上ないよう適切な制度設計は必要。(多様な学び保障法を実現する会・喜多明人)
 
■「学習内容は休むこと」といった本人に即した学習内容が柔軟に認められる方向であり、計画が達成されなかったからといって子どもを追い詰めることは法案の趣旨に反する。(フリースクール全国ネットワーク・松島裕之)
 
■運用の構築にあたっては関係者の意見を充分に反映させ、そもそもの法案の目的に照らして、一人ひとりの状況を充分に勘案した体制を構築していきたい。(文科省・前川喜平審議官)
 
■現在の学校復帰のみの対応によって苦しんでいる本人の居場所をいかに確保するかが法案の役割。しかし法的に定められた「就学義務」の特例を認めるためには、法的な手続きを定めなければならない。そのために個別学習計画を示した。いま追い詰められている子どもや親への「助け舟」のつもりでつくった。これ以上負担を増やしたいという意図はない。また個別学習計画での教育内容も本人の意思を十分に尊重した内容が認められるべき。(馳浩議員)
 
◎「個別学習計画」を利用しない場合への意見
 
■個別学習計画を利用した場合は「義務教育の履行とみなす」とあるが、利用しない不登校の家庭は「義務教育の履行とみなさない」として、現状にそぐわない登校圧力などをかけられるのではないか。(共産党・畑野君枝議員)
 
■不登校は学校を欠席している正当な事由がある状態であり、不登校の子の保護者は就学義務を履行しているとも、履行していないとも、文科省は言いません。これまで文科省内の意見も分かれていましたが、これよりこの認識で統一されます。(文科省・前川喜平審議官)
 
◎財政支援に関わる意見
 
■財政措置は努力規定とはいえ、これまで学校外教育に公費支出を出す仕組みはなかった。(フリースクール全国ネットワーク・奥地圭子)
 
■実施主体の教育委員会の人的・財政的負担は相当なもの。十分な措置がなされなければ法案の実施が危ぶまれる。(教育委員会関係者)
 
■財政措置は文科省に責任を持って体制を構築してもらう。ただし、不登校をビジネスとする団体の介入には懸念がある。(馳浩議員)
 
■営利企業のなかには良心的な学習支援活動に従事している場合もあり、すべて除外するわけにはいかない。自治体と市民による支援協力体制づくりが求められる。(多様な学び保障法を実現する会・喜多明人)
 
◎地域間格差への意見
 
■フリースクールが存在しない地域があるなど都市部と地方でかならず格差が生じるが、教育の平等性はどう担保されるのか。(民主党・宮川典子議員)
 
■適応指導教室ですら全国の自治体に設置されていない。経済的支援が検討されるなかで格差是正の対策を図っていく。(馳議員)
 
◎「排除の論理」につながることへの意見
 
■同じ教室の中で、多様性を認めあい、共に育っていくのが、障害者権利条約のいうインクルーシブ教育。教室から排除しておいて多様な機会を認めるというのはインクルーシブ教育ではない。(障害児を普通学校へ・全国連絡会・名谷和子)
 
■「手のかかる子」がむやみに排除される懸念もあるが、それは不適切な制度運用から生まれたもの。特別支援に関する問題と多様な学びの場の公教育参入の問題は、目的、性質の異なる事柄。(多様な学び保障法を実現する会・喜多明人)
 
◎卒業資格と「二重学籍」問題への意見
 
■就学義務の関係上、子どもはフリースクールに通っていても、学籍は学校に置いたままだった。法案によって「二重学籍」問題は解消する。(フリースクール全国ネットワーク・奥地圭子)
 
■学校から教育委員会に籍が移るものの、フリースクールなどで独自に卒業資格が出せるわけではない。この法案では「二重学籍」は解消されない。(フォロ・山下耕平)
 
■法案第12条に「学齢生徒が学校に在籍しないで(中略)学習活動を行うことが適当」という文言があるが、では、その子の学籍はどこにあるのか、学籍というものがない学齢期の子どもの存在を容認するのか、という疑問が生じる。(学校に行かない子と親の会 大阪・山田潤)
 
■既存の「中学校卒業者」と比べ個別学習計画を利用した「修了者」が就職時などに不利な扱いを受ける可能性があり、問題だ。(伊藤書佳)
 
■法案によって「二重学籍」問題の基本は解決する。ただし、進学・就労時に「差別的な扱い」を受ける危険がないとは言えない。この点は今後、検討される制度の運用、制度設計上の問題であり、重要な課題の一つ。(多様な学び保障法を実現する会・喜多明人)
 
◎国・地方公共団体の責務への意見
 
■国や教育委員会などに対し、一人ひとりの子どもの状況に応じた支援をすることを「責務」として規定されたことは評価したい。(フリースクール全国ネットワーク・奥地圭子)

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