今回は、自殺対策支援に取り組むNPO法人ライフリンク代表・清水康之さんにお話をうかがった。自殺問題とは何か、また昨今問題となっている子どもたちのいじめ自殺についてもうかがった。
――自殺問題に関わるきっかけは?
2001年に放送されたNHKの「クローズアップ現代」という番組で、自殺で親を亡くした子どもたちについて取材をしたことがはじまりです。調べていくなかで、自殺というのは「追いつめられた末の死」であるにも関わらず、十分な対策が取られていないことがわかってきました。年間で3万人以上、1日90人もの方が自殺で亡くなっている現状に対して、なんとかアプローチしていきたいと思い、2004年3月にNHKを退社しNPO法人「ライフリンク」を立ち上げました。
そもそも、私は高校1年のときに中退して、アメリカに留学しているんです。とにかく学校がきらいで息苦しくて、生きづらさみたいなものを感じていました。
私が通っていた学校は新設の進学校で、少しでも有名な大学に行くということが目的のすべてのようなところでした。むろん、先生に対して異論を唱えるなんてもってのほかで、そういう生徒はダメな生徒と見なされます。同時に、勉強できない生徒もダメな生徒と見なされるわけで、そういう見られ方をする空間に自分がいるということが非常に息苦しく感じられました。このままここにいても、そうした学校の価値観に徐々になれていってしまうだろうと思い、でもけっしてそうはなりたくなかったので、「ここから逃げるしかない」と思って退学を決めました。
「自殺」は、そうした息苦しさの最たるものであると思います。生きづらくて生きづらくてどうしようもない人たちが自殺に追い込まれていくわけで、それがずっと自分が抱えていた問題意識と合致したわけです。
自殺問題とは
――毎年3万人が自殺している現状をどう捉えていますか?
1997年から1998年にかけて、自殺者数は8千人以上増加しています。それまでは2万人台の前半で推移していた年間自殺者数が、この年に急増したわけです。そうした状況がいまだに高止まりを続けているというのは、明らかに異常事態だと思います。
背景には、北海道拓殖銀行や山一証券が相次いで破綻したことなどによる失業者の急増や、非正規雇用の社員の比率を増やそうとする労働環境・社会構造の変化という影響を受けるなどして、中高年男性の自殺者数が急増したと考えられます。
WHO(世界保健機関)では自殺を「避けられる死」としています。
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