不登校新聞

623号 2024/4/1

「支援の受け手から担い手に」保護犬の世話を通した不登校・ひきこもりの自立支援

2024年03月27日 14:55 by kito-shin
2024年03月27日 14:55 by kito-shin

 不登校やひきこもりなどで自立に悩む若者が、保護犬のお世話を通して社会に出るための準備をする。そんな独自の支援プログラムを行なっている団体があります。茨城県つくば市にあるNPO法人キドックスです。具体的な取り組みとプログラムに参加する若者のようすについて、代表の上山琴美さん(以下、上山)、事務局長の岡本達也さん(以下、岡本)にお話をうかがいました(※写真左・上山琴美さん、写真右・岡本達也さん)。

* * *

――まずキドックスさんの取り組みについて教えてください。

上山 私たちは茨城県つくば市に「ヒューマンアニマルコミュニティセンターキドックス」という施設を構え、不登校やひきこもりなどで社会から孤立し、居場所や自立に悩む子ども・若者の支援と、捨て犬の保護活動を組み合わせた動物介在活動を行なっています。

 捨て犬の保護活動とは、飼育放棄や虐待にあった犬をおもに茨城県の動物指導センターから保護し、心身のケアや、人と快適に生活ができるよう社会化トレーニングをすることです。

 また、トレーニングを経て家庭で暮らす基礎力が身についた犬を、「保護犬と出会えるカフェ」の運営を通して新しい飼い主へと引き合わせる譲渡活動もしています。

 飼育放棄や虐待にあった犬というのは、人にお世話されることに慣れておらず、そもそも人との接し方を知らないことが多いです。だから保護してすぐ里親に預けることは難しいんですね。犬の性格をよく観察して、すこしずつコミュニケーションを取りながらお世話し、人に慣らしていかなければなりません。

犬との関わりが 自立支援に

 保護犬が人に慣れ、新しい家族と暮らせるようになるまでのプロセスに、私たちは若者の自立支援プログラムを組み合わせています。プログラムの名前は「いぬのいえ」と言います。若者たちにはおもに、犬とふれ合ったり、人の手からごはんを食べさせたりして、「人と暮らすことは怖くないよ、楽しいんだよ」ということを犬に伝える役割を担ってもらっています。つまり、「いぬのいえ」では若者たちに、支援される側から支援する側にまわってもらうことが大切だと考えているのです。

 なぜなら支援を受けるばかりだと、「ありがとう」をずっと人に言い続ける状態になり、自己肯定感が高まらないと思うからです。やっぱり人って、誰かのために行動して感謝されたり、目に見える成果を得たりするなかで、自分の力を信じられるようになると思うんです。だから「いぬのいえ」では、私たちが若者に何かするのではなく、犬のためにいっしょに活動することをメインにしています。そのなかで生活リズムや心身の調子を整えること、作業の取り組み方やチームワークなど、社会で働くためのスキルを身につけることを目指していきます。

――「いぬのいえ」のようすを具体的に教えてください。

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