不登校新聞

377号 (2014.1.1)

東ちづるさんに聞く まぜこぜの社会を

2014年03月06日 13:13 by kito-shin


 今号のインタビューは、女優・東ちづるさん。2012年より、一般社団法人「Get in touch」の理事長としても活動している東さんに、「まぜこぜ」の社会を目指す思い、不登校への考えについて、うかがった。

――「Get in touch」という活動を始めるきっかけは何だったのでしょうか?
 「骨髄バンク」や「ドイツ平和村」などのボランティア活動を続けて、今年で22年目を迎えました。社会のありようが少しずつ見えてきたかなと思っていた矢先、3・11が起きました。

 あのときの被災地の避難所は、「日本社会の縮図」でした。避難所には子どもから老人まで、また目に見える障害のある人、発達障害やセクシャルマイノリティなど分かりにくい障害のある人などあらゆる人がいました。ただでさえ、ストレスの多い避難所生活において、ふだんは接点を持たない人たちどうしが支え合うということがいかに難しいか、社会が不安に陥ったとき、マイノリティがより追いつめられる現実があったのです。

これまでの方法で社会は変わるのか


――なぜ法人を立ちあげたのでしょうか?
 これまで、ずっと個人として活動してきました。周囲にも「私はどの団体にも属さない」と明言していました。日本には多くの当事者支援団体がありますが、えてして団体どうしがあまり手をつないでないという現実があります。何かしたいと思ったときにはその都度、個々の団体や地域の人たちとつながりをつくっていくほうが、私のスタイルにも合っていると思っていたんです。

 でも一方で、「このままのやり方で、社会は本当に変わっていくのかな」という思いがずっと心に引っかかっていたのも事実です。



 講演会やシンポジウムにスピーカーとして呼ばれることもあるのですが、そうした場に集まるのは意識や関心の高い人たちばかり。私よりくわしい人だって大勢います。

 講演会で話を聞いて知識を得ることは大切だけど、社会を変えたいという場合、大事なことは「私には関係ない話だ」と思っている人をいかに巻き込むか、ではないかと。必要なのは「正しい知識」や「理解」より「誰も排除しない」ということ。私たちが目指すのは、どんな状況、どんな状態であっても「いっしょに居る」、ちがいをハンディにしない、特性としてアドバンテージにできる、「まぜこぜ」の社会です。そのつながりをどんどん広げていきたいと考えています。

――活動の軸にアートと音楽を据えた理由とは?
 アートや音楽などは、見えない壁をひょいと越える力があります。しかも楽しく。「楽器が弾けない」とか「絵にくわしくない」という人はいても、「きらいだ」という人はめったにいませんから。それに、「啓発」っていう言葉、あまり好きじゃないんです(笑)。

 そして、私たちは支援という言葉も使いません。「支援する」「支援される」という関係ではなく、いっしょに誰もが生きやすい社会をつくっていくのです。

モットーは"ワクワク”


 だから活動するうえでのモットーは「ワクワク」。他人事と感じている人たちに対し、自分事として感じてもらうには、「ワクワク」する時間と空間がまず必要だと思うんです。スタイリッシュで、楽しければ、人は集まりますから。

 最初は「何かおもしろそうだな」と思って参加したとしても、その場でいろいろなことを「知る」ことができます。それは「気づき」につながっていきますよね。「まぜこぜって居心地いいんだ」とか「なぜ今はそうじゃないの?」って。

――法人として活動を始めて1年、あらためて感じたことなどはありましたか?
 3・11をきっかけに、日本は変わると思っていました。もっと開かれた社会になるんじゃないかって。でも、現実はちがいました。たとえば、メディアがマイノリティと呼ばれる人たちを取り上げる際、デリケートに対応する姿勢が依然として根強く残っているのを肌で感じました。

 2012年10月に発足した「Get in touch」も、多くのメディアに取り上げていただきました。さまざまな障害のある人もメンバーのプロのロックバンド「サルサガムテープ」とコラボしたライブイベントにも取材が入りました。



 しかし、いざ、放送となると、フォーカスが当たっているのは私やほかの著名人ばかり。「私のすぐそばに、笑顔のメンバーがたくさんいたじゃない、なぜそこをカットしちゃうの!」と、何とも言えないもどかしさを感じましたね。配慮というより遠慮じゃないかって。テレビなどで、障害者の人たちを取り上げるのは年1回の特番だけじゃなくて、もっともっと日常的に色とりどりの人が出演できるといいなと思います。

――こうした活動を続けていく背景には、東さんご自身に「核」となる思いや経験があるからでしょうか?
 う~ん、難しい質問だー(笑)。もちろん、私が生きづらさを抱えて生きてきたからとか、目の前でおぼれている人を放っておけないからとか、説明しようと思えばできますけど、後付けっぽくて。

 たとえば、「何であの人が好きなの?」って聞かれたらいろいろ答えを探すでしょ。でも、理由なんて複合的ですよねぇ(笑)。

 ただ、たしかなことは、おもしろくすることができるから、これまでそして今現在も続けられているんだと思います。何事も楽しいっていう思いがなかったら続かないですよね。
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