「ベーシック・インカム」という、新しい生活保障制度が、いま、実現の可能性をめぐって強い注目を集めている。ベーシックインカムとはなにか。多様な教育を推進するネットワーク「おるたネット」の代表であり、「ベーシック・インカムの実現を探る会」の古山明男さんにお話をうかがった。
――ベーシック・インカムとは何なのでしょうか?
すべての人の最低生活を保障するために、すべての個人に無条件で継続的に政府が渡すお金です。貧しい人だけに出すのではなくて、すべての人に出すとベーシック・インカムと呼ばれます。当面、毎月8万円を支給することが具体案として出ています。
――世帯ではなく「個人」なんですね。
そうです。"家庭”を中心とした社会が変化し、個人単位になりつつあります。また、家族内には支配が生じがちです。家庭内暴力や虐待に苦しむ人も、一人ひとりに定期的にお金が支給されれば、逃げ出して生きることができます。また、一回かぎりの定額給付金では、使って終わりです(笑)。支給が継続的で、それに基づいた暮らしを考えられるようでないと生活保障になりません。
――子どもにも、お金持ちにも支払われるのですか?
無条件で支払われます。誰にでも毎月8万円。15歳未満は半額というところでしょうか。ベーシック・インカムは、生きることそのものにお金を出します。貧者救済とはぜんぜん違います。お金持ちだからといって差別しません。
また、低所得者にだけ出すのは、線引きがとても難しいこともあります。
ミーンズテスト(収入・資産の調査)というのがあります。ミーンズテストがあるために、生活保護は、受給資格者の2割程度しか受給されていないとも言われています。生活保護は、ミーンズテストで労力とお金が費されますが、「なんであいつがもらうのにオレは」という不公平感がなくなりません。ベーシック・インカムは「人間の生存権」を保障するシステムです。どんな人でも、どんな状態でも最低限の保障が常にされるものです。
――なるほど、ベーシック・インカムの法的根拠は生存権にあるんですね。
憲法は、25条で「すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」(生存権)と明記しています。どんな国民ならば保障する、という条件は書いていません。これを言葉だけでなく、具体的な収入保障にしてしまおうということです。
不登校やひきこもりで苦しむ人たちには、人間としてありのままの尊重が必要です。その「ありのままを尊重」することを、経済の仕組みのなかで考えた場合、このベーシック・インカムがもっとも近いのではないでしょうか。
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