Q.解離性、ボーダー……、人格障害という診断名をここ最近よく聞くようになりました。また、解離性人格障害という言葉も耳にすることがありますが、これらは一体どういうものなのでしょうか?また、周囲の人は何に気をつければいいのでしょうか
A.まず、「解離性人格障害」という言い方についてですが、そういう概念は診断基準のなかにはありません。一般的に利用されている基準では、「解離性障 害」と「人格障害」とは別の概念構成をしています。さて、自我というものは、①自己の知覚、思考、行為は自分がやっているという"能動性の意識”、②自分 は同一の瞬間において一つであるという"単一性の意識”、③過去の自分と現在の自分は同一であるという"同一性の意識”、④自己と他人とは違うという"境 界の意識”――以上、4つの意識によって成立していると考えられています。そして、こういった意識や人格の統合的な機能が一時的に傷害されて起こる現象を 「解離」と言っています。

 「解離性障害」には、記憶喪失として知られているように、記憶のある部分が欠落してしまう"解離性健忘”や、記憶障害を伴ってあるときふっといなくなっ て別のところで発見される、あるいは自分が気づくという"解離性遁走”、また二重人格・多重人格と言われるもので、一時の記憶や感情だけでなく自分自身で あるという感覚の一部が切り離されて起こる"解離性同一性障害”、さらには自分が自分でない感覚、意識が身体から遊離して外から自分を眺めているような感 覚に襲われる"離人性障害”などがあります。



 これら「解離性障害」の発症原因は、幼児期の性的・身体的虐待や性被害、あるいは近親者の死、犯罪や災害における被害、またいじめなど含め、長期間にわ たってストレスにさらされて精神的に疲弊してしまうような状態に陥ることなど、深い心的外傷体験が背景にあると考えられています。そして、この障害は一過 性に回復することもありますが、一方、慢性化する場合もあって決して侮れないものです。

 また、「人格障害」ということについて、以前には精神病質と言われていた時代もありました。「人格障害」は精神疾患とは区別され、その様態の特徴によっ て多様なカテゴリーに分類されています。その詳細は省くとして、簡単に言えば、行動パターンが彼の属する社会の文化・常識(平均的なあり方)から著しく逸 脱し、そのために個人あるいは社会に機能不全が生じているというところから診断されます。ですから、下手をすると社会の都合に合わせられない者は何らかの かたちで人格障害にカテゴライズされてしまいかねないものであるということにも注意を払っておかなければなりなせん。――個人的には、相談される方の"個 性”に対して"人格が障害している”などという失礼な理解の仕方をしたことがありません。

 対応については、診断名にこだわらず、その人が何に悩みどういったことで苦しんでいるのかという点に目を向け、その解決に援助していくことが最も重要であると考えています。診断名でその人を理解することはできません。(宇部フロンティア大学 臨床心理士 西村秀明)