連載「ひきこもり時給2000円」vol.1


 今号から新連載「ひきこもり時給2000円」を始める。執筆者は、働くことに悩みを抱える若者を支援する「地域若者サポートステーション」で相談員を務める岡本圭太さん。岡本さんは就職失敗を機に、ひきこもった経験を持つ。「ひきこもっていた当時の気持ち」「一番苦しかった時期を脱したきっかけ」のほか、現在は相談員として働いているお立場から、行政による支援サービスの具体的な中身や活用方法など、多岐に渡って執筆いただく予定。

 春、そして4月。さあ、またこの憂鬱な季節がめぐってきました。
 
 「早く桜が散ってくれないかな」と思っていると言ったら驚かれるかもしれませんね。「ようやく桜の花が咲いたというのに、何をバカなことを言っているんだ?」というように。でも、少なからぬ数のひきこもりの人たちにとっては、それが実感なのではないかと思います。桜の花なんて早く散ってしまえばいいのに。早く春がすぎて5月になってくれればいいのに。
 

"桜”はつらい

 
 ひきこもっている人にとって、桜の季節ほどつらい時期はありません。春は卒業と進学、就職に転勤など、まわりがそわそわしてどうにも落ちつかない季節です。周囲の人や昔の友人たちは次々と新たなステージへと踏み出していっているのに、自分だけが取り残されてどこにも行けないし、たどり着かない。自分だけが完全に周回遅れ……。
 
 そんな不安と苦痛に満ちた春を僕も何度も通りすぎてきました。今でも桜の木を見上げると、「きれいだな」と思うよりも先に、「現役のひきこもりの人たちは、今きっとつらいだろうな」という思いが先に立ってしまいます。これはもうしょうがないですね。なかば性分みたいなものです。あの時期の記憶が鮮烈にすぎるのです。


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