不登校新聞

594号 2023/1/15

わが子の卒業式に今悩んでいる親へ 親が大事にすべきことが1つあります

2023年01月25日 10:24 by kito-shin
2023年01月25日 10:24 by kito-shin

 「卒業式には出ますか?」「卒業アルバムの写真はどうしますか」といった学校からの確認連絡を受け、どうしたものかと頭を悩ませている親御さんも多いのではないだろうか。そもそも、不登校経験者は卒業式に出席したのか、欠席したのか。出席・欠席したことをふり返って、今どう思っているのか。不登校経験者80人に行なったアンケート結果から見えてきた、わが子の卒業式を控えた親が大切にすべきこととは。

* * *

 冬休みが明けました。小学6年生や中学3年生のお子さんを持つ親御さんのもとには「卒業式に出るか否か」「卒業アルバムの写真はどうするか」など、学校からの連絡が来ている場合もあるかと思います。不登校と卒業式をめぐり、親が大事にすべきことが1つあります。

 それは子どもの「自己決定」です。「最後ですから」という担任の言葉に親の気持ちが揺らいだという話も聞きますが、卒業式で卒業証書をもらう子どもの姿を見て「ひと区切りついた」と安心するのは大人です。卒業式に出る・出ない、卒業アルバムをもらう・もらわないについては、子ども自身で決めることが何よりも重要です。その理由について、本紙で以前、不登校経験者80人に実施したアンケート結果から考えます。

80人の本音は

 不登校経験者80人を対象に行なった卒業式に関するアンケート結果を見ると、「出席した」と答えたのは62%、「欠席した」と答えたのは38%でした。
 興味深いのは「卒業式に出席(または欠席)してよかったか?」という質問に寄せられた回答です。

 出席者のうちもっとも多かった回答は「どちらともいえない」で4割を超えました。この点については「後悔したくないと思って出たが周囲の対応に傷ついた」「居心地が悪かった」といった意見が寄せられました。また、「最後だから」という周囲の期待に応じるかたちで出席を決めた人からは「卒業式に出るという経験ができたことはよかったが、後悔もしている」という意見もありました。

 他方で、欠席者のうちもっとも多かった回答は「欠席してよかった」というもので、8割に達しています。逆に欠席したことを後悔する声は1割に満たなかったのです。

 回答者からは「もう学校へ行きたくなかったから」という声があったほか、卒業アルバムについても「学校からは何ももらいたくない」との理由で受け取らなかったという声もありました。子どもが考え、自身で決めたことについては、卒業からしばらく経った後でも肯定的に捉えられていることがうかがえます。

多様な選択肢を

 アンケートの回答を整理するなかで、卒業式のあり方についても、興味深い点があります。回答者のおよそ半数がいわゆる学校行事としての式典には参加せず、別のかたちでの卒業式を経験していたのです。一例を挙げると、①校長室で個別に、②教室で不登校をしていた子どもたちで、③自宅で、などがありました。

 くり返しになりますが、もっとも大事なことは子どもの「自己決定」です。学校行事としての式典の出席にこだわる必要はありません。上記のようなさまざまな選択肢について親と学校間で相談することも大切ですし、言うまでもなく、そのなかには欠席という選択肢があることも重要です。

 子どもは日々葛藤するなかで、気持ちも変わります。昨日まで行くと言っていたのに、急に行かないと言い出す場合もあるかもしれません。子どもの気持ちの揺れに、親もとまどうことがあるかもしれません。卒業式を控えた今、親にできることは「卒業式に出るか出ないか」という二者択一を迫ることでも、「出たほうが良い悪い」という価値判断をすることでもありません。揺れる子どもの自己決定の「今」を、その都度、受けとめていくことだと思います。(編集局・小熊広宣)

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