不登校新聞

305号(2011.1.1)

不登校から見えたこと 三田家の場合

2013年07月30日 14:24 by kito-shin



父親 "どんなに傷ついたって家族の治癒能力が"


 三田家の家族構成は父と母と子どもが2人。家には祖母も同居していた。約10年前、長男が小学校3年生のときに不登校。それを追うように長女が幼稚園から登園拒否。以来、子どもたちは家を中心に育ってきた。そんな子どもたちを三田家の父・三田剛さんと、母・三田たみよさんはどのように見てきたのだろうか。三田家の父母にお子さんとの関わり、祖母との関わりについて語っていただいた。お話のなからは、不登校から見えてきた居場所観、家族観、子育て観が見えてきた。

――長男の不登校当時の話から聞かせてください。
三田たみよ(以下・母親)
  そもそも息子は幼稚園のころから家に居たかったのに無理やり私たちが連れて行ってたんです。だから、幼稚園に行くときはずーっと泣いてました。小学校にあ がってひどい担任にあたったり、友人関係のこじれがあったのもきっかけになって小学校3年生のときに不登校になりました。私はすぐに家にいたいんだろうと 思って学校の先生とも話しました。

三田剛(以下・父親)
 女房は理解が早かったんです。幼稚園のころに登園拒否をしてましたから。

母親 息子が学校をリタイアしたとき「私も解放してくれたんだな」と思ったんです。意識していたわけではないけど、私の生活も子どもたちの学校中心で進んでいました。だから「お母さん、もういいよ」と言って時間を戻してくれたんじゃないかな、と。

  でも、同居しているおばあちゃんも父親もわかってくれない。息子は不登校後、しばらくしてから半年間、ひきこもってました。そのときは昼間も家中のカーテ ンを閉めて、生活リズムは昼夜が逆転して、夜になると叫びだす。私に対してはいろんなことを要求してきて家から出そうとしない。一番困ったのは長女である 妹をいじめることでした。こうなるとおばあちゃんも見すごせないから介入してくる。父親は、一度息子の首根っこを掴んで放り投げて「社会に出たらもっと大 変なんだ」って叱りつけたこともありました。あのときは、もう離婚しかないなって思いましたけど。

父親 いやあ、そのときの記憶がないんです。本当に申し訳なかったなと思っています。ちょうど僕自身の職場も変わって残業が月100時間以上なんてときもありました。自分がいっぱいいっぱいだったのを息子にぶつけてしまったんだなって思うんです。

  だから、僕は時間が必要でしたが、不登校がいろんな考える時間をくれたような気がします。すこし考えが整理されてから始めたのが夜の散歩でした。子どもた ちと夜に出て散歩をする。これが本当に楽しかった。散歩をしながらいろんな話をしました。宇宙の話、川の話、自分の小さいころの話。それから叱りつけたと きのことも謝りました。

母親 あのころはホントに楽しかった。一度、深夜2時のゲームセンターに行ったときもあったし、昼間の遊園地に行ったりね(笑)。

母親 "ちゃんと受け止めれば、返してくれる、私自身が救われた"


父親 あれから約10年、その間、長女も幼稚園を登園拒否してからずっと家ですごしています。でも、僕がリストラされ心配をかけたときも、女房が乳ガンを 患った時期も、そして、一昨年に同居の母が自宅で亡くなるまでの時期も、それはそれは大変なこともありました。でも、子どもたちもずいぶんと協力してくれ たので、家族の雰囲気は悪くなかったと思うんです。それは東京シューレや親の会に関わって孤立せずにいられたこと、不登校をきっかけにして自分の価値観を 再構築できたこと、それらがすごく大きかったんだと思います。

母親 ちゃんと受けとめれば、子どもは倍にして返してくれるんだなって思い ます。いま、息子はアルバイトをしているんですが、はたから見ていてきつそうだなと思うときがあるんです。それを聞いたら「わかってたからいいんだ、時が 来れば自然と回ってくるんだから」と。必要な試練は自然と時間に乗ってやってくる。だから、いまは仕方がない。むしろ自然な流れならば止めないほうがい い、と。そう思っているみたいです。それを聞いて、私自身が救われたような気がしました。私も幼稚園のころにいじめられたことはいまもよくおぼえていま す。でも、それを無理に解決させようとするのではなく、息子の言うようにもっと自然な流れに身を任せていこう、と。

父親
 傷ついても家族には人生の治癒能力があるんだと思うんです。この先のことを考えれば心配なこともありますが不安はないです。理由はつかないけど、僕は彼らを信頼していますから。

――ありがとうございました。(聞き手・石井志昂)

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