実際に岡本さんが持ち歩ているポーチ。左下に見える錠剤が「レキソタン」。
※本文中には精神薬についての記述があります。効能については個人差があるほか、精神薬については多剤投与や小児への安易な投薬などの問題指摘がされています。処方については信頼できる医師とご相談ください。
連載「ひきこもり時給2000円」vol.19
「向精神薬」と聞いて、みなさんはどんなイメージを持たれますか? たぶん、あまりよいイメージはないんじゃないかな。「ちょっとアブナイもの」って思ってる人もいるかもしれない。僕が呼んでいただく講演会では、精神科医療のお世話になったという話をほぼ毎回するので、質疑応答になると、医療や薬についての質問はほぼ毎回のように出てきます。
人によっていろんな見方があると思いますが、僕自身は、ココロのお薬にはそんなに嫌なイメージはありません。「ビタミン剤やサプリみたいなもん」とまでは言いませんが、風邪薬と同程度にはカジュアルかな。日ごろ持ち歩いているポーチには、「レキソタン」という抗不安薬を入れてあります。毎日飲みはしないけど、不安が出てきたときだけ飲む「頓服」という飲み方です。毎食後きっちり飲むのは、性格的に向いてないもので……。
いままでいろんな種類のお薬を出されたけど、いちばん自分に合ったのは「レキソタン」でしたね。もちろん、「僕にとっては」ということですので、これを読んでいるあなたにもこの薬が合うということではありません。薬には相性があるので、同じ薬でも人によって効き方がちがったりします。Aさんには副作用がまったく出ないのにBさんには出たりもするし、効くかどうかも人によってちがう。「この薬はこう」ということは、ある程度までは言えるけれど、細かいところは飲んでみないことにはわからないです。僕の場合、一般に副作用が少ないと言われるSSRIやSNRI系のお薬は全然ダメでした。もう、めっちゃ眠くなる。なのですぐに変えてもらいました。
誰にも万能に効く薬はないのだから
ここで、精神科のお薬について、僕が大切だと思っていることを3つ書きます。あくまで、「岡本の経験ではこうだった」ということですけれども。
その1。さっき書いたように、人によって効果の出方がちがいます。細かい理屈まではわかりませんが、なぜかそうなってます。あと、同じ薬を飲んでいても、効果の出方が変わることもあります。僕はずっと前に「ノーマルン」という睡眠薬を飲んでいたことがあるのですが、ある時期から不具合が出ました。目が覚めてから1時間くらい身体が動かず、布団から出られない。その後医者に話して「デパス」に変えてもらったら、これは副作用もなく快適にすごせました。これは、耐性ができたということではなくて、僕の状態が以前より良くたから薬の効き方が変わったのだと思います。
大切なことその2。医者との信頼関係。次回の診察で、「この薬は合わない」とか「飲んだけどこうでした」と言える関係です。もしそれが言えないと、合わない薬を延々飲み続けたり、嫌になって病院に行かなくなったりしてしまう。最悪、医者や薬についての不信感や、嫌なイメージだけが残ってしまうことも考えられる。よくあるパターンですが、これは残念ですよね。「この人が勧めるんだから飲んでみようか」と思えたほうが良い。
最後は、あなたが「治したい、良くなりたい」と思っていること。誰にでも効く万能な薬があったとしても、イヤイヤ飲んでたんじゃ効くものも効きません。「お薬になおしてもらう」という姿勢ではなく、「自分が良くなりたいから薬の力を借りる」。こっちのほうが絶対効果が出ます。それは、風邪薬を飲むときでも同じなんですけどね。(つづく)
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