不登校新聞

308号(2011.2.15)

(仮称)オルタナティブ教育法骨子(案)

2013年07月16日 14:58 by kito-shin
2013年07月16日 14:58 by kito-shin

1 目的

この法律は、子どもの個性を尊重し、多様な学習のニーズに応じて、学校教育法に定める学校以外の「普通教育」のための学習の場を公教育として位置づけ、オルタナティブ教育の促進を図ることを通して、等しく教育を受ける権利を保障(教育の機会均等)することを目的とする。

2 オルタナティブ教育の定義

この法律でいうオルタナティブ教育とは、学校教育法の規定に従い文部科学大臣が定める教育課程に関する事項(学習指導要領)によらない普通教育をいう。

3 オルタナティブ教育により教育を受ける権利

子どもは、オルタナティブ教育によっても、教育を受ける権利を持つ。

4 オルタナティブ教育における「普通教育を受けさせる義務」

保護者(子に対して親権を行う者[親権を行う者のないときは、未成年後見人]をいう。以下同じ。)は、子に9年の普通教育を受けさせる義務を、オルタナティブ教育によっても果たすことができる。親の教育権は尊重される。

5 義務教育としてのオルタナティブ教育の実施

義務教育としての普通教育は、オルタナティブ教育を実施する機関においても実施できるものとする。義務教育の目的については、教育基本法に基づく。義務教育年限、普通教育を受けさせる義務、普通教育を受けさせる義務の猶予・免除、経済的就学困難への援助義務、学齢児童・生徒の使用者の義務については、学校教育法と同じとする。

6 オルタナティブ教育の実施機関および登録オルタナティブ教育機関

この法律で言うオルタナティブ教育機関とは、学校教育以外のオルタナティブな教育を実施する場を言う。そのうち、公教育としてこの法律に基づいて登録されたものを「登録オルタナティブ教育機関」と呼ぶ。

(1) 登録オルタナティブ教育機関の範囲
登録オルタナティブ教育機関の範囲は、「普通教育」である初等教育、中等教育を実施するところとする。学校教育法で言う幼稚園に相当する幼児教育、大学および大学院に相当する高等教育、高等専門学校および専修学校等の専門教育等は除く。ただし、将来的には検討の対象とする。

(2) 登録オルタナティブ教育機関の設置および実施
オルタナティブ教育機関を登録して実施できる者は、次の者とする。
① 登録できる団体
ア) NPO法人、社会福祉法人、一般社団法人、一般財団法人
イ) 地方公共団体(アへの事業委託を含む)
② 登録できる家庭
ア) 保護者

(3) 登録オルタナティブ教育機関の登録
オルタナティブ教育機関を登録して実施する場合には、この法律に基づき登録を行うものとする。登録要件は公に策定する。
① 登録要件の策定
登録の要件の策定にあたって、国は登録要件策定委員会を設けて検討し、広く公の意見及び子どもの意見も聴取する。登録要件策定委員会の構成は、教育関係者、オルタナティブ教育実践者、保護者、オルタナティブ教育経験者、オルタナティブ教育研究者、子どもの権利に詳しい弁護士、その他子どもに関わる専門家、有識者で構成する
② 登録要件
登録要件については、子どもの学習権の保障、教育機関の民主的な運営、子どもの人権保障等を踏まえたものとし、以下の項目について定める。登録する者が保護者の場合の要件については、親の教育権を尊重し、簡易なものとする。
(団体・家庭共通の登録事項)
ア) 設置者または実施する保護者に関すること
イ) 教育機関に関すること
a) 教育の方針や特長に関すること
・ 子どもを尊重した教育理念であること
・ 矯正・訓練ではないこと
・ 子どもの学習ニーズに応じること
b) 学習内容に関すること
・ 開設または実施日数、学習課程や方法等について
c) 子どもの人権保障、虐待防止等に関すること
・ 体罰を禁止し、虐待を行わないこと
・ 子どもの意思確認や意見表明の機会を確保していること
・ 子どもの権利の啓発・普及を行うこと
(団体の登録事項)
d) 子どもの人数に関すること
e) 代表者に関すること
f) 人的環境に関すること
g) 物的環境に関すること
h) 運営に関すること
・ 子ども、保護者、スタッフの参加・参画による民主的な方法とすること
・ 子どもの学習ニーズに応じた教育活動を実現するため、子どもの意見表明・参加の尊重とその機会を確保すること
i) 監査に関すること
・ 運営および会計を監査するための監査機能をもっていること
j) 就学に関すること
・ 入学、退学、転学について
③ 登録手続
オルタナティブ教育機関を登録して実施する場合には、団体および地方公共団体は国に申請する。保護者は市区町村に申請する。
④ 審査委員会
国は、団体が設置するオルタナティブ教育機関の登録にあたって、登録要件を審査する。審査委員会の構成は、教育関係者、オルタナティブ教育機関関係者、保護者、オルタナティブ教育経験者、オルタナティブ教育研究者、子どもの権利に詳しい弁護士、その他子どもに関わる専門家、有識者で構成する。保護者の登録については、市区町村は審査委員会を設置しない。

(4) 登録オルタナティブ教育機関の管理運営
① 経費の負担
登録オルタナティブ教育機関の設置者または実施する保護者は、法令に特別の定のある場合を除いては、その設置する教育機関の経費を負担する。
② 授業料の徴収
登録オルタナティブ教育機関においては、授業料を徴収することができる。ただし、地方公共団体が設置する施設における義務教育については、これを徴収することができない。
③ 管理運営、登録の継続・廃止
登録オルタナティブ教育機関の設置者または実施する保護者(ホームエデュケーション)は、毎年度以下を届け出て更新する。年度内に変更が生じたときは、その都度届け出る。廃止する場合は廃止の届け出をする。
ア) 学習内容に関する事項…学習計画書、学習報告書
イ) 実施者および実施内容に関する事項…子どもの人数、代表者、人的環境、物的環境、事業計画書および予算書、事業報告書および決算書、交付金に関する事項。ただし、実施者が保護者の場合は簡易なものとする。
④ 安全健康保持の増進
子どもおよびスタッフの健康診断の実施、その他安全保健に必要な措置を講じる。

(5) 登録オルタナティブ教育機関の登録の取消
国および市区町村は、登録オルタナティブ教育機関がオルタナティブ教育法の規定に違反した場合においては、その登録を取り消すことができる。その場合、あらかじめ、当該オルタナティブ教育機関に弁明の機会を与え、国においては審査委員会で慎重に検討しなければならないこととする。登録の取消については、不服申し立てをすることができるようにする。

(6) 登録オルタナティブ機関の初等教育機関
登録オルタナティブ教育機関のうち、初等教育を実施する機関の目的、目標、修業年限については、学校教育法に定める小学校についての規定を準用する。子どもが登録オルタナティブ初等教育機関から小学校または特別支援学校小学部へ異動する場合は、子どもと保護者の意思に基づいて、学齢に対応して自由にできるものとする。

(7) 登録オルタナティブ前期中等教育機関
登録オルタナティブ教育機関のうち、前期中等教育を実施する機関の目的、目標、修業年限については、学校教育法に定める中学校についての規定を準用する。子どもが登録オルタナティブ前期中等教育機関から中学校または特別支援学校中学部へ異動する場合は、子どもと保護者の意思に基づいて、学齢に対応して自由にできるものとし、中等教育学校前期課程へ異動する場合は学校教育法の定めるところによる。登録オルタナティブ前期中等教育機関の学習課程を修了した者には、高等学校および高等専門学校ならびに専修学校の高等課程への入学資格を付与する。

(8) 登録オルタナティブ後期中等教育機関
登録オルタナティブ教育機関のうち、後期中等教育を実施する機関の目的、目標、修業年限、入学資格については、学校教育法に定める高等学校についての規定を準用する。子どもが登録オルタナティブ後期中等教育機関から高等学校・中等教育学校後期課程・特別支援学校高等部へ異動する場合は、学校教育法の定めるところによる。登録オルタナティブ後期中等教育機関の学習課程を修了した者には、大学および専修学校の専門課程への入学資格を付与することができる。

7 オルタナティブ教育センターの設置

国および地方公共団体は、オルタナティブ教育を推進し公的支援を実施するため、またオルタナティブ教育機関の登録および助言、支援の窓口の機関としてオルタナティブ教育センターを設置する。
① 国が設置するオルタナティブ教育センター
オルタナティブ教育機関のうち、家庭以外を担当する。
② 市区町村が設置するオルタナティブ教育センター
オルタナティブ教育機関のうち、家庭を担当する。
③ オルタナティブ教育センターが実施する公的支援
ア) オルタナティブ教育機関への助言・アドバイス、情報提供
イ) 教育資源(施設・備品)の提供
ウ) オルタナティブ教育コーディネーターの配置および養成
エ) 公的に設置される学習権オンブズパーソンの周知
オ) オルタナティブ教育に関する調査・研究・普及
カ) 登録オルタナティブ教育機関に対する助成金の交付

8 オルタナティブ教育機関への公費助成と優遇

国および地方公共団体は、オルタナティブ教育機関の公の性質および教育において果たす重要な役割にかんがみ、登録オルタナティブ教育機関の設置実施者に対し、オルタナティブ教育に関し、その自主性を尊重しつつ、必要な助成を行い、その振興を図る。また、税制等の優遇措置を講じる。

9 オルタナティブ教育の質の確保

(1) 登録オルタナティブ教育機関は、子どもの個性尊重と権利保障にもとづいた適切な学習内容および学習環境を維持する。
(2) 国および地方公共団体は、オルタナティブ教育センター等を通じてオルタナティブ教育機関に対して適切な助言や支援を行う。
(3) 国および地方公共団体は、学習権オンブズパーソンや第三者機関を設置する。

10 国および地方公共団体の責務

(4) 国および地方公共団体は、子どもおよび保護者に、オルタナティブ教育に関する十分な情報を提供する。
(5) 国および地方公共団体は、義務教育において、オルタナティブ教育と学校教育との間に格差や差別が生じないよう策を講じる。
(6) 国および地方公共団体は、オルタナティブ教育の推進に努めなければならない。そのためにオルタナティブ教育に関する施策を総合的に策定し、オルタナティブ教育の実施、普及、発展のために必要な予算を確保する。
(7) 国はオルタナティブ教育を推進するため、オルタナティブ教育推進会議を設置する。会議の構成は、教育関係者、オルタナティブ教育機関関係者、保護者、オルタナティブ教育経験者、オルタナティブ教育研究者、子どもの権利に詳しい弁護士、その他子どもに関わる専門家、諸外国のオルタナティブ教育実践者や専門家、有識者で構成する。

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