学歴、職歴、病歴不問"いい人"ならば雇用
不登校、ひきこもり、ニート、障がい者など「社会的弱者」を600名以上雇用しているIT企業「ISFネットグループ」。しかも社員の98%がITに関する職歴のない未経験者だ。未経験者や「社会的弱者」を積極雇用する理由を同団体の代表・渡邉幸義さんにうかがった。
――設立当初からITに関する未経験者を積極的に雇用したと聞いていますが?
私たちのIT事業というのは大きく分けて2種類の仕事があります。ネットワークと開発の仕事。ネットワークというのは道路をつくること、開発というのは車をつくること。ネットワークの道路には「ルーター」と呼ばれる機械が必要です。このルーターは世界中で何千万台も設置されていますが2年ぐらいで壊れます。そうすると、ルーターの設置・サポート・保守サービスをしてくる仕事、これが絶対に必要なんです。だから、私たちの仕事は雇用を増やしています。
一方、IT事業は新しいテクノロジーを使う仕事ですから、いままでの古いテクノロジーに精通したエンジニアは必要ありません。新しく若い人を雇いトレーニングを積んでもらうのが一番の近道でした。では誰を雇うのかと言えば、僕の定義で「いい人」です(笑)。
「いい人」っていうのは、人の揚げ足を取らないとか、時間に遅れないとか、謙虚だとか、いわゆる当たり前の事ができて、人の嫌がることをしない人です。奥手で大人しいタイプの人も多いですね。謙虚なほうがじつは仕事ができるんです。すなおに人の話を聞いて吸収できるからです。それに僕がいい人だと思う人はお客様にもそう思っていただけると思います。なぜなら僕の価値観はごく一般的だからです。僕の顔を見て……、ふつうでしょ。僕はよくある顔で、よくある考え方の人間なんです。だから僕がいい人だと思う人は、だいたいの人はいい人だと思うんです。
社員の98%が未経験者
いい人を採るのに必要ないのが履歴書でした。ですから設立から5年間、履歴書なしで採用を続けました。僕の採用試験はすごいですよ。採用試験の際、僕がみんなを見て、開口一番「はい、全員採用!」って(笑)。ただ、その後「自分が持っている悪いところ、あるいは病気を全部言ってください」と。それを聞いて、うちの会社の説明をして「できる自信がなかったら辞めたほうがいい」と言うんです。そう言うと2~3割は辞退します。でも残った人は仕事を続けます。履歴書も病気も弱みも関係ないんです。過去と他人は変えられないから。でも、自分と未来は変えられます。変えられる未来と自分に対してコミットメントすれば、人間は約束を果たそうとします。
そういうやり方はまわりからも社員からも「大丈夫なのだろうか」と言われてきましたが、設立から5年後には社員が1000人いました。給料も遅延なしで払っています。戦後、これだけ急激な雇用拡大ができた会社はなかったそうです。そういう実績が信頼を得ていきました。つまり、人のスキルではなく人間的な面にスポットを当てようと思ったのがそもそものきっかけだったんです。いま社員の98%が未経験者です。
読者コメント