"ふつうでもおもしろい”という実感


今年の抱負に、私は「脱ミスチリ」を掲げた。「ミスチリ」とは「ミスター散り(塵)」の略で、「次々に取材のオファーを送っては、塵のように散っていく男」を意味する称号である。某人気ロックバンドの名前に似ているが、決してあんなカッコイイものではない。

この編集部での活動を始めて長いが、今まで自分でインタビュー取材をゲットしたことは一度もなく、自分の会ってみたい人に会えるという、最大の胸キュンイベントはずっとお預け。インタビューの神を呪い、散っていった企画書たちの魂を供養するべく「企画之墓」まで自作した。「ミスチリ」は「企画の送り人」まで兼任することになった。

そんな苦労(?)も、めでたく報われた。正直、まったく期待していなかった。今回、インタビューを依頼した相手、鬼頭莫宏さんはかなり多忙な大物漫画家である。インタビューを受ける時間などあるのか? これまで何枚もの企画書が散らせてきたが、今回は、とくに見込みがない。私のような人間が、この大作家に企画書を送るというのは、フナ一匹釣ったことのない男が、クジラ漁船に乗り込むのに等しい行為だ。完全にダメ元、半ば自暴自棄ともいえる精神状態で「えいや」とFAXを送り、後は野となれ山となれ。


「企画之墓」

編集部に設置された「企画之墓」。墓の中には、先方から取材を拒否され「散った企画書」、すなわち若者達の夢と希望がいまも眠る。





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