連載「渡辺位さんの言葉」


 渡辺位さんと歩いていて、迷子になったことがある。講演会のお迎えにあがったのだが、大阪駅から地下鉄への乗り換えで、知らない道ではないはずなのに、なぜか地下通路の迷路に入ってしまった。コミゴミとした雑踏のなかを迷い歩いて、私のほうは内心ひや汗をかいていたが、渡辺さんは物めずらしそうにあれこれ見て歩いて、おしゃべりはずいぶんはずんだ。そして、その後の講演会で、「今日は迷子になったんです」と切り出して、迷子の話をされたのだった。
 
 迷子というのは、目的があるから焦ったりするので、それを変更してしまえば、迷子をやめて、知らない道での出会いや発見を楽しむことができる。人生も同じではないか、と。
「人生で迷うこともよくあって、あわてたり焦ったり、葛藤することがありますが、それも何が何でもこうでなくてはならないという目標や目的を持つから、その通りにならないと、迷ったり、悩んだりする。しかし現実なんて、何ごとにつけ、よく言うことですが、なるようになるけど、なるようにしかならないんですよね。だから、迷子になったら、迷子をやめればいい。つまり、人生に迷うことがあったら、何がなんでもといった物事へのとらわれを捨てればいいんだと思いました」(「不登校は文化の森の入口」2002年9月フリースクール・フォロ1周年記念講演録より)


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