不登校新聞

548号 2021/2/15

新年度直前でも入学受付可。過去最多を更新した通信制学校の人気とは。

2021年02月12日 13:45 by shiko

 新型コロナウイルスの影響により、2020年度は学習環境が激変した一年だった。そうしたなか、学習が思うように進まず、進路に不安を感じている中学生も多い。はたして、新年度を2か月後に控えた今、このまま全日制高校に進学・進級していいのかどうか、と。そんなとき、一つの選択肢として挙がってくるのが通信制高校だ。通信制高校は、自宅など学校以外でも学習ができるため、通学の機会は少ない。通信制に通う生徒には不登校を経験した生徒も多いが、「時間を有効に使いたい」と考えるスポーツ選手や芸能活動を行なう生徒なども進路先として選ぶようになっている。文部科学省の調査によれば、通信制高校に在籍する生徒は5年連続で増加。ここ2年は連続で過去最多を更新し、高校生の15人に1人が通信制高校に在籍していることがわかった(2020年5月時点)。では、通信制高校は全日制高校とどうちがうのか。今から検討して願書を出しても来年度入学に間に合うのか。通信制高校などを10年にわたり取材している北澤愛子さんにお話をうかがった(編集長・石井志昂)。

●通信制と全日制高校のしくみの比較


文部科学省「平成29年度 学校基本調査」より作図(通信制高校ナビ作成)

●「通信制高校ナビ」北澤愛子さんに聞く

――通信制高校とはどのような高校なのか、その魅力や全日制高校とのちがいを教えてください。

 高校は大きく分けて全日制高校、定時制高校、通信制高校と、おもに3つの教育課程があります。全日制高校は、平日は通学して朝から夕方まで授業を受ける形式。定時制高校は、おもに夕方から夜の時間帯に通学して授業を受けるスタイルで、日中は勤労している学生もいます。通信制高校は、通信教育による自宅学習がメインとなり、必要な通学日数が全日・定時よりも少ないのが最大の特徴です。

 さらに、「サポート校」という通信制高校を卒業するための機関もあります。通信制高校は自宅学習がメインになるぶん、期限までにレポートを出さないと単位が取れないなど、自己管理能力が求められます。そこで、卒業に向けて勉強や精神面をケアしてくれる「サポート校」にも併せて通う生徒も多いです。サポート校は法律上、塾と似たような位置づけ。サポート校に通う場合は、塾に通いながら高校にも通うのと同じですから、そのぶん、別途学費がかかります。通信制高校が国や自治体からの就学支援金を受けられる一方、サポート校は対象外となる点には注意が必要です。

――どのような生徒が通信制高校に通っているのでしょうか。

 かつては、中卒ですぐに就労した人たちが高卒資格を得るために入学するケースが一般的でした。ところが最近では、こうしたケースに加え、学校になじめなかった不登校の子、芸能界やプロスポーツの世界を目指している子などが進学先として通信制高校を選んでいます。

――文科省の調査では、通信制高校に通う生徒数が過去最多を記録しました。何が魅力なのでしょうか。

 おもに3点あると考えています。最大のメリットは登校回数の少なさ。多くの学校では、週1回から週5日までの通学コースのなかから好きな通学回数のコースを選択できます。学校やコースによっては、ほとんど通学しなくても卒業ができる学校もあります。そのため、不登校の子のなかには、通信制のほうが安心して、自分のペースで勉強ができるというケースも多いです。

 2点目は、卒業のしやすさ。全日制高校の場合、学年で定められた科目をすべて修得しなければ留年になる「学年制」がほとんど。その修得方法も、授業への出席と定期考査によるものがおもで、欠席や欠課が多いとなかなか卒業できません。一方、通信制高校では3年以上在籍し、定められた単位を修得しさえすれば卒業できます。単位修得のために必要な条件は、定められた数のレポート提出(年間約50通~60通)とスクーリング(学校で直接、授業を受けること)、単位認定試験をクリアすること。学年のない単位制なので、1年目に修得単位数が少なかったとしても、3年目に必要単位数に達することができれば、3年間で卒業ができます。

 そして、3点目が入学や転入のしやすさです。通信制高校のニーズ増と、応募倍率はけっして比例しません。一部の人気校を除けば間口は広く、入りやすいと言えます。年間を通して転入生を受けいれる学校も多く、入学時から3年後の卒業時までのあいだに生徒数が倍増しているケースもめずらしくありません。生徒の自主・自律によって成り立っているため、生徒数に応じて教員の負担が大きく増えないのが、理由でしょう。

 また、転入学に必要な条件として、学力はさほど問われません。入学試験では国語・数学・英語の学力試験や、面談、作文がある場合が多いですが、それも個々の生徒の学力を認識してケアをしていくための試験にすぎません。入学してみると、その生徒に応じて中学校レベルの内容から教えてくれる学校も多いと聞きます。

――不登校の人にとっては、学校で授業を受ける「スクーリング」の回数は気になるところ。多いパターンとしては週に何日程度なのでしょうか。

 よく聞くパターンは3つです。まず、もっともメジャーなのが、週1回~2回だけ通学するパターン。1日通学したら翌日は休むなど、通学と自宅学習を交互に行なえます。学費の目安は、公立と私立の全日制高校の中間程度です。

 次に、週5日間、平日は毎日通学するパターン。単位を取るための必須科目に加え、自分が興味ある分野を学ぶために外部講師の授業を通学で受けたり、大学受験に向けての勉強を行なったりします。学費は、ざっくりいえば私立の全日制高校程度のイメージで、公立の倍以上かかると思っていていいでしょう。

 3つ目が、合宿パターン。ふだんの学習は通信教育が中心ですが、年に1回程度、沖縄や北海道、屋久島など自然の多い地域に一週間ほど滞在し、スクーリングやテスト、体験学習などを行なうというものです。地方への渡航費をのぞけば学費の目安は、公立の全日制高校と同程度です。こうしたパターンは、各校のコースによって異なってきますので、出願時に希望のコースを選ぶとよいでしょう。また入学後、その年に取得したい単位に応じて、通学日数も自動的に決まります。

「通信制高校ナビ」運営・編集者・北澤愛子さん

――通信制高校に部活があるのか、どのように展開されているのかも気になるところです。 

 部活はありますが、数は少なく、また「入部すべき」という暗黙のルールはありません。実態としては、野球部や軽音部など比較的メジャーな部活動ほど展開される傾向にあり、定時制と通信制高校が合同で大会に参加するケースもあります。とはいえ、毎日生徒どうしが会うわけではなく、行ける人どうしで日程を合わせて集まり活動を行なうため、気軽に取り組めます。

――通信制高校では、学制服を着たい生徒、着たくない生徒の意思は尊重されるのでしょうか。

 できるだけ制服着用を推奨する学校もあれば、入学式や卒業式などの式典だけ制服着用を求める学校、着用を義務づけるコースを設ける学校もあります。制服は学校によって方針が異なるところですが、制服を着用する・しないは自分で選べる学校が多いです。なかには、学校指定外の制服を着て登校できる学校もあります。いずれにしても、制服が気になる方は事前リサーチが必須です。

――入学申請をしたい場合、いつまでに願書を出せば間に合うのでしょうか。

 仮に2021年の4月、つまり再来月から通信制高校に入学したい場合、大方まだ間に合います。多くの学校が20年度の3月まで願書を受け付けており、なかには21年度の4月上旬でも同年度入学の願書を受け付ける学校もあります。焦らず、数ある通信制高校からご自身に合う学校を探すのがよいと思います。リサーチ期間はまだ十分にあります。

 では、どう探し、絞ったらよいか。次の点を意識するとよいでしょう。

 第一に、実際にスクーリング(通学)の回数を途中で変更できるかどうか。週1回の通学コースから始めて、実情に応じて増やしたい人もいれば、週5回コースから始めて減らしたい人もいると思います。とくに学校へ通うのがつらかった人は、進学してから自分がどんな心理状態になるのか不安もあるかと思います。学期や年度ごとにコース変更ができる学校のほうが、無理なく学習が続けられるでしょう。第二に、パンフレットなどの紙資料やHPだけで判断せず、できれば実際にキャンパスに足を運ぶこと。それが難しければオンライン相談会や電話などで、学校側と直接話をしてみることです。その際に、自分自身の悩みや通信制高校に対する不安を打ち明けてみることを勧めます。自分の不安や疑問に真摯に対応してくれる教員や職員がいるかどうか。「自分にとっていい先生がいる」と思えたら、それは大きなポイントです。信頼できる先生がいることは、安心材料になり、学習継続のモチベーションにもつながります。どんな仕組みがあるかよりも「この高校へ通いたい」という気持ちが一番大事ですので、ご自分の目と耳で、自分にとって最良の通信制高校を見つけてください。

――ありがとうございました。(聞き手・石井志昂/編集・桜田容子)

 

* * *

●わが子の進学先を考えるときに親が大事にすべき2つのこと

 通信制高校の生徒数が2年連続で過去最多を更新しました。今号の6面で『不登校サポートナビ』の北澤愛子さんがくわしく解説したように、人気が集まっている理由は、従来の学校と比べて入学のしやすや選択肢の多様さにあるようです。

 『不登校新聞』に登場した人のなかには、高校3年生の秋から通信制に転校して居場所を見つけた人もいました。通信制に移ってからようやく「人の温かさに触れた」と言います。一方で、通信制に入学するも、わずか3カ月で不登校になり、再度、「学校へ行けない自分に苦しんだ」という人もいました。

 両者のちがいを一概に言うことはできませんが、あえて言えば「自分のタイミングで動けたか」だと思いました。これまで多くの不登校の人を取材してきましたが、自分の気持ちに正直になって選んだときや自分が納得して動けたときは、何か問題が起きたとしてもなんとかやっていけます。私自身は高校へ行かず、中卒のまま、「休息の時間」を多くとり、自分のタイミングで働き始めることができました。それが結果的にはよかったと感じています。ところが焦りや罪悪感、周囲からの期待など「他者の眼」を軸にして行動すると、やはりうまくいきません。

 進学の時期になると、子どもは親を含めた周囲の眼が特段、気になるものです。親や周囲は自分の焦る気持ちをぐっとこらえて、本人の意思とタイミングを最大限、尊重していただきたいと思います。(編集長・石井志昂)

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