不登校新聞

551号 2021/4/1

新学期目前、今の子どもの心境は。4つの行動パターンと対応方法

2021年03月31日 17:46 by shiko


中村尊さん

 新学期を直前に控えた今、不登校をしていた子はどんな心境を抱えているのでしょうか。不登校の子とともに歩んできた中村尊さん(フリースクール「クレイン・ハーバー」代表)に、子どもたちの心境と周囲に求められる対応をうかがいました。

* * *

――不登校の子どもたち、そして学校へ通ってはいるものの苦しさを抱えている子たちは新学期を前にどんな心境になっているのでしょうか?

 小中学生の子どもたちに占める不登校の割合は2%弱です。また、学校へ行くのがつらい、苦しい子たちを「苦登校」と僕は呼んでいますが、苦登校の割合は3割や4割、あるいは半分くらいにものぼるんじゃないでしょうか。

 「子どもは一人ひとりちがう」という大前提を忘れてはいけませんが、不登校と苦登校の子は、新学期を前にやる気や希望よりも不安や心配のほうが大きいと感じています。ただし置かれている環境で心境は少し変わるようです。

 卒業などで環境が変わる子は、喜びだけでなく不安があります。不登校の子が過去を消化できていないと「学校へ行ってなかったから、これからの勉強についていけないかもしれない」と不安になってしまいます。苦登校の子は、これまでのつらい環境から解放されて、気持ちが少し楽になっているかなとも思います。しかし、新しい環境で「また同じような苦しみが待っていたら」と悩んでいるかもしれません。

 一方、学年が変わるだけで環境が変わらないように見える場合であっても、不登校の子は、まわりが進んで自分だけが変化しないように感じてしまい、落ち込んだり自己嫌悪に陥ったりすることがあるんですね。苦登校の子も、いじめられている子なら「クラスが変わってもいじめられたらどうしよう」と不安を感じていますし、4月からもいじめという環境が変わらなければ、新しい1年も長く苦しいものとなってしまいます。

SOSは見逃しやすい

――不安を感じている子たちは、どんな行動をとるのでしょうか?

 前提としてお伝えしたいのは、大人って「子どものSOSやサインを、見逃してしまうもの」ですし、「子どもの行動を、都合のよいように解釈するもの」なんですよ。そのことは子どもとの関わりのなかでは、いつも頭にとどめておいてほしいなと思います。そのうえで「環境を変えたくない子」「否応なしに環境が変わる子」「周囲からの期待を重く感じている子」「比較・評価されるのが苦しい子」という4タイプを説明します。

 新年度になっても「環境を変えたくない子」は、「今日は、家にいてお母さんとすごせてうれしかった」など、無意識に自分の気持ちをアピールします。環境を変えようと大人が考えているのを察知したら、お母さんにくっつくなどして甘えてくることがあるかもしれません。甘えてくるのは、今の状況でいたい、環境が変わらないでほしいというサインなんです。

 進学をするなど「否応なしに環境が変わる子」は、焦ったりイライラしたり、落ち着きがなくなったりしますね。無口になって無言の抵抗をすることもありますし、胃が痛くなるなど体調が悪くなる子もいます。本人の言うことがコロコロ変わるというのも、環境が変わる子の特徴です。「学校へ行ったらこれをやってみたい」と言っていたかと思えば、「やっぱり行きたくない」と言ってくることもあります。大人はその言葉だけに反応してイライラしてしまうかもしれませんが、子どもの言葉の裏にあるのは不安です。

 また、「周囲からの期待を重く感じている子」は無口になって、口をきかなくなりますね。体調を崩すこともあるかもしれません。返事も生返事だったり、声がけさえもうるさいなと感じたら自分の部屋に避難して出てこなくなったりもします。もし口数が少ないな、避難しているなと思ったら、プレッシャーや期待をかけすぎたのかもと気づいてほしいなと思います。

評価が苦しい

 同学年の子やきょうだいなどと「比較・評価されるのが苦しい子」も口をきかなくなったり、自分の部屋に避難したりしますね。外に活路を見出すような子は家出をするかもしれません。

 親としては比較・評価していないつもりでも、対応や態度がちがえば、子どもはそれを敏感に感じとります。たとえば、不登校をしている子どもの兄が中学に上がるときには家族で引越しをしたのに、自分が進学するタイミングでは、父親だけが単身赴任を選んだとしたらどうでしょうか。親としてはまったく悪気はないし、兄のときにはさみしい思いをさせた経験から、単身赴任を選んだのかもしれませんよね。でも、不登校している子どもからすれば、そうした対応のちがいに疑問を感じてしまうこともあるのではないでしょうか。

 もちろん親も人間ですから、きょうだいのどちらかと相性が合わないこともあると思うんです。でも、かける愛情は変わらないようにしないといけないですよね。「あなたを大事に思っている」と、言葉で伝えてほしいなと思います。

挑戦したい気持ちには

――行動パターンを踏まえたうえで、大人はどう対応したらよいのでしょう?

 環境が変わる子には、新しい環境が合わなかったら「戻れる」安心感を与えてほしいなと思います。「ダメなら、フリースクールに戻ればいいんじゃない」「また家ですごしても大丈夫なんだよ」と伝えることで、子どもの不安を軽くしてあげられるんじゃないでしょうか。

 逆に「行けなかったらどうするの」と親が追いつめてしまったら、新しい場所が合わないときに「無理だったら死ぬしかない」とさえ思ってしまいます。戻れる場所があると思えるだけで、「ちょっと行ってみようかな」とチャレンジできる気持ちが生まれるんです。

 期待を子どもに背負わせないことも大切です。新年度を迎える前に、親御さんは学校にクラス替えのときに配慮をお願いして、先生が応じてくれる場合があります。親御さんも先生も、子どもによかれと思っての行動です。でも、これは大人の勝手な期待と作戦なんですよね。大人の期待に応えられなかったら、子どもはできなかった自分を否定してしまう。それに「学校に進学する」というだけでも親の期待がたくさんつまっていると思いませんか。その期待は、いったい誰のものなのかをまずは考えてみてほしいと思います。

 もちろん親だって期待しますし、不安もあります。気持ちがソワソワして平常心でいられないときには、親の会やフリースクールのスタッフ、相談機関で思いをぶちまけてください。期待と同じように不安も子どもに背負わせないことも忘れないでほしいなと思います。

 周囲の大人以上に、子どもたちはどうしようもない不安を抱えています。学校へ行っていない状態、不安でイライラしている状態、胃が痛くなっている状態、どんな状態であってもその子をまるごと受けいれてほしいんです。

 「みんなが通ってきた道だ」と否定するのではなく、「それは不安になるよね」と伝えることが安心感につながります。

 そのためには、子どもが話をしてくれたら最後まで聞くことです。子どもが話をしてくれるのはチャンスなんです。チャンスを逃してしまうと、子どもはどんどん話してくれなくなってしまいますから。最後まで聴いて気持ちに共感すること、気持ちを受けとめることが何よりも大切だと思います。

 一方、子どもも親には話しづらい場合もあります。「言いにくいこともあるだろうから、ほかのところに話してみれば」と、匿名で話せるチャイルドラインを紹介してほしいですね。

さまざまな進路のかたち

――不登校の子たちがどんなふうに成長していくのか、まだあまり知られていないと感じています。ロールモデルがあれば教えてください。

 高校へ進学せずに、20歳をすぎてから自分の意思で通信制高校に入学して今は働いている子、高校をやめて大学受験の失敗をきっかけにひきこもっていたけれど、自分からバイトを始めた子、中学はずっと不登校で高校から自分の好きなデザイン関係の学校に進む子など、本当にいろんな子がいます。ペースは人それぞれで、その子のタイミングがあるんですよね。だから、学校へ行っていなくても焦らなくて大丈夫です。次のステップに進むためには、学校へ行くかどうかにかかわらず、安心した場がある、戻れる場があることが大切なのではないでしょうか。

 コロナで社会構造が見直されています。ひきこもっている人でも、テレワークなら仕事ができるかもしれませんよね。社会が硬直化して風通しの悪かったことが、コロナをきっかけに見えてきたと思うんです。

 これからの社会は柔軟性が問われていくと思います。学校へ行かなきゃいけない、決められた制服しか着られない、というのは柔軟性のない環境なんですよ。柔軟性を養う意味では、不登校はよい経験ですし、柔軟な育ちをしていると思いませんか。実際にわが子が不登校になったときに、そのように考えるのは難しいかもしれません。家庭のなかだけでがんばるのはたいへんですから、親の会、相談機関、SNSなど外部のものを活用しながら、不登校をプラスに捉えてもらえたらいいなと思います。

――ありがとうございました。(聞き手・石井志昂、赤沼美里)



■フリースクール クレイン・ハーバー
 2004年3月に設立された長崎市初のフリースクール。不登校の子どもたちの居場所として、学習支援や体験学習などさまざまな活動を行なう。

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