いじめや教員を理由とする不登校について、調査の回答者が教員か子どもかにより、その認識に数十倍から数百倍の開きがある。そのちがいについて、不登校に関する3つの調査を比較するなかで、これからの不登校支援を考えるうえでの現状の課題について考える(※画像の詳細:「問行調査」は主たる要因、「実態調査」と「練馬区調査」は複数回答・編集部作成)。
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「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(以下、問行調査)によると、2021年度に不登校だった小中学生は、24万4940人で過去最多となった。20万人を超えたのは初であり、10年間で2倍に増加している。そこで、今回は不登校における現状の課題について、3つの調査結果から考えたい。
調査でばらつき
そもそも、子どもたちはどのような理由から不登校になっているのか。まずは、教員が回答者である「問行調査」の結果を見ると、不登校の要因のトップは「無気力、不安」(49・7%)となっている。直近の10年を見ても、不登校の要因の最たるものとして挙げられているのは「無気力、不安」など、子ども自身に関わるものだ。また、「教員」は1・2%、「いじめ」は0・2%だった。
一方、子どもが回答者である調査が2つある。文部科学省が昨年10月に公表した「不登校児童生徒の実態把握に関する調査」(以下、実態調査)と、東京都練馬区が今年11月に公表した「練馬区不登校に関する実態調査」(以下、練馬区調査)だ。
「実態調査」を見ると、不登校のきっかけとして「無気力、不安」という項目はないものの、「教員」を挙げた小学生が29・7%、中学生が27・5%、「いじめ」を挙げた小学生が25・2%、中学生が25・5%となっており、「問行調査」の結果と比べて大きな開きがある。
続いて、「練馬区調査」の結果を見ると、こちらも不登校のきっかけに「無気力、不安」という項目はない。学校に関することでもっとも多かったのは「学校やクラスに合わなかった」(43・1%)であり、「いじめ」(38・3%)、「教員」(34・6%)と続くなど、こちらも「問行調査」の結果と大きな開きが見られる。つまり、不登校の理由をめぐり、教員と子どもの認識にこれだけのズレがあることが調査結果から見て取れる。
子どもからの問題提起を
3つの調査結果について、調査の時期、規模、方法などのちがいから単純な比較には慎重を期すべきという指摘もあるだろう。しかし、あえて比較することが重要だと私は考えている。不登校の理由を教員ら大人の解釈でのみ捉えるのではなく、「実態調査」や「練馬区調査」の結果から浮かび上がった子どもの声から考える視点を持つことが、これからの不登校支援を考えるうえで欠かせないのではないか。スタート地点を取りちがえた不登校支援は、子どもの安心感につながらないからだ。その意味で、「問行調査」自体も見直すべきだろう。事実、先に開かれた「不登校に関する調査研究協力者会議」でも「無気力、不安」というカテゴリーがあることを疑問視する声が委員から出ていた。
子どもが回答した2つの調査結果は、現在の学校教育に対する子どもからの問題提起でもある。それを大人がどう受けとめ、不登校支援につなげていくか。今、問われているのは、不登校の増加という子どもの問題ではなく、子どもの視点に立脚した不登校支援を打ち出せていない大人の問題である。(編集局・小熊広宣)
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saya94353
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