不登校新聞

488号 2018/8/15

「中動態の世界」から見た不登校 意志という幻想が奪った言葉

2018年08月15日 07:56 by kito-shin
2018年08月15日 07:56 by kito-shin



 新しい問題を提起した作品に贈られる賞として知られる「小林秀雄賞」や「紀伊國屋じんぶん大賞」。昨年から今年にかけて双方を受賞したのが『中動態の世界』(医学書院)だった。著者の國分功一郎さんが言う「中動態の世界」とは何なのか。不登校についても意義のある問題指摘なのか。不登校経験者がお話をうかがった。

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――北海道では「学校に行かさらない」という方言があるそうです。この表現があれば、私が不登校だったときにラクだったかもという気がします。

 その表現は私もツイッターで教えてもらいました。「スイッチを押ささる」のような使い方をするそうですね。「行かさらない」を標準語にあてはめれば「行かない」になりますが、まったくちがったニュアンスになります。「行かさらない」という言葉には「意図したわけではないが、状況のせいでそうなってしまう」という意味合いが含まれているからです。

 「行かさらない」は「中動態」的な発想でしょう。私は『中動態の世界』(2017年・医学書院)でこれをくわしく検討したんですが、現代の言語というのは「能動態」と「受動態」が対立していますよね。この対立はごくかんたんに言うと、「する」と「される」の対立です。私たちはどんな行為もそのどちらかであると考えてしまいます。そして、「する」ときは自分に意志があって、「される」ときは自分の意志とは関係がない、強制されていると考える。基本的に意志の有無でいろいろなことを分けているわけです。

概念も言葉もなかった「意志」

 ところが、古代の言語ではそうではありませんでした。古代の言語では「能動態」と「中動態」が対立していて、何かが自分の外側で完結するか、それとも自分の内側で完結するかという対立で行為をわけていました。たとえば「与える」は能動態ですが、「ほしい」は中動態です。

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