不登校新聞

502号 2019/3/15

進学・就職とまわりが動き出す春、親子で焦らないための極意とは

2019年03月14日 10:36 by koguma
2019年03月14日 10:36 by koguma

※筆者・『不登校新聞』東京編集局記者 小熊広宣

 卒業式や修了式といった学校行事が終われば、あとは春休みの到来を待つばかりとなりました。冬の寒さが緩み、植物の芽吹きを感じる変化もあいまって、春は喜ばしい季節だと思われがちですが、はたしてそうでしょうか。

自分だけが“周回遅れ”

 「早く桜が散ってくれないかな」。

 ひきこもり経験者である岡本圭太さんは、春が来るたびに感じていたつらさをこのように語っています。「自分だけが周回遅れのような気がして、どうにも落ち着かなかった」というわけです。

 じつは、不登校の子どもたちのなかにもこれと似た思いを抱くことがあります。以前、取材した子どもは「もうじき新学期だというのに、1年前と何も変わっていない自分を責め続けていた」と、体験談を話してくれたことがありました。

親もソワソワ

 一方、春が落ち着かないのは親も同じかと思います。親戚やご近所さんから進学に関する話題が聞こえてくるとソワソワしたり、その話題をつい避けてしまったり。

 とくにこの時期には、子どもみずから「4月から学校へ行く」と宣言することもあり、親もうれしくなってしまいます。

 しかし、ここで注意したいのは「子どもが動き出すタイミングは、子どもの外側でなく、内側につくる」ということです。

 新学期というのは、クラスメイトや担任が変わるなど、さまざまな変化がある時期です。子どもたちどうしの人間関係を新たに構築するやりとりのなかでは、緊張とストレスが非常に高まります。

 加えて、内閣府の調査でも、新学期が始まる4月上旬は、子どもの自殺が年間で2番目に多い時期だという結果が出ていることも忘れてはなりません。

あなたは大丈夫

 では、親はどうすればいいのか。私は「背中にそっと手を添えてみる支援」こそ、子どもの安心感にダイレクトにつながると考えています。

 他者を動かそうとするとき、えてして「引っ張り上げる支援」をしてしまいがち。しかも、子どもも焦っていますから、無理して動きすぎてしまうことがあります。

 とはいえ、それが子ども本人の内側にあるタイミングとリンクしていない場合、かえって焦りを増大させてしまったり、無理をした反動が大きく出てしまうこともあるわけです。

 冒頭でご紹介した岡本さんは現在、ひきこもりの若者の就労支援機関で働くほか、自身のひきこもり経験を話す講演会で全国をまわっています。そのきっかけになったのは年配の男性から言われた「あなたは大丈夫、力のある目をしている」という一言だったそうです。

 「人が自信を持って動き出すとき、特別な働きかけはかならずしも必要ではない」というひとつの実例だと、私は思います。(東京編集局・小熊広宣)

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