不登校新聞

561号 2021/9/1

「死にたい」「消えたい」と思う瞬間の子どもの胸の内とは

2021年08月31日 16:50 by koguma
2021年08月31日 16:50 by koguma

 本紙では1998年の創刊以降、多くの不登校当事者・経験者のインタビューを掲載してきました。そのなかには「死にたい・消えたい」と語る子どもたちも、すくなくありません。夏休み明け前後の8月後半から9月前半は子どもの自死が1年でもっとも多い時期です。

 そこで、本紙の子ども若者編集部員にアンケートを実施。「死にたい・消えたい」と考えたことがあるか否か、それはどんなときかなど、19名の不登校経験者から寄せられた声から考えます。

* * *

 今回、本紙の子ども若者編集部メンバーを対象に、「不登校経験者に聞く~『死にたい・消えたい』と思うとき」と題し、アンケートを実施したところ、19名から回答がありました。

 アンケートではまず、不登校をしていた当時に「死にたい・消えたい」と考えたことがあるか否かについて聞きました。その結果、19名中17名が「ある」と回答しています。

 つぎに「死にたい・消えたい」と考えた回数についてたずねてみると、もっとも多かったのが「10回以上」(11人/64・7%)と6割を超えました。以下、▼「1~2回」(3人/17・6%)▼「5~10回」(2人/11・8%)▼「3~5回」(1人/5・9%)という結果になりました。

自分で自分を責めてしまう

 では、どのようなときに「死にたい・消えたい」と思ったのか。複数回答でたずねた質問でもっとも多いのは「自分で自分を責めてしまうとき」(15人/88・2%)という回答でした。つづいて多かったのは「学校へ行きなさいと周囲から言われたとき」「学校へ行っていないことで周囲から注意・叱責されたとき」(ともに6人/35・3%)となっています。

 今回のアンケートは、本紙の子ども若者編集部のメンバーが対象であり、不登校経験者の声を代表するものではありません。しかし、回答者の大半が「死にたい・消えたい」という思いを抱き、苦しんできたことがうかがえます。

 また、「家族から『お前は生かされているだけ』と叱責されたとき」「相手は注意・叱責とは思っていない程度の気軽な感じで『今日学校は?』と聞かれたとき」などにそうした思いを抱いたという声もありました。

 不登校の子どもに対する注意や叱責、また何気ない一言などの周囲の言動が、つらい気持ちを抱えている子どもをさらに追いつめてしまう場合があることについて、あらためて注意する必要があると感じます。

SNSや動画、心の救いに

 つづいての質問は、「死にたい・消えたい」という気持ちになったとき、そのつらさをどうやりすごしたのか(複数回答)についてたずねてみると、じつにさまざまな声が寄せられました。

 「ツイッターなどのSNS」(4人/23・5%)「ユーチューブを観る」(3人/17・6%)のほか「テレビゲームやスマホ」「料理」「読書」「ノートに自分の気持ちを書く」といった声もありました。

 一方で、「自傷行為をした」「睡眠薬を飲んでひたすら寝た」といった声や「あと1時間後にはこのつらさは終わっていると自分に言い聞かせて乗り切った」「夜中、眠れなくて家族に知られないように声を殺して泣いていた」と、当時のつらさをありのまま寄せてくれた方もいました。

 学校へ行っていない自分をみずから責めるなか、不登校経験者はみな、自分自身の方法で、抱えるつらさを乗り切ろうとしているように感じます。では、つらい気持ちを誰かに相談したことはあるか否か、なぜ相談したのか、逆になぜ相談しなかったのかについてみていきます。

 「死にたい・消えたい」という気持ちになったとき、誰かに相談したか否かについてたずねました。「相談した」(3人/17・6%)、「相談しなかった」(14人/82・4%)という結果になり、回答者の多くが相談していないことがわかります。(後編『「死にたい」と相談できずが8割、不登校経験者の声から見える本音』へはWEB版不登校新聞へ)

アンケート概要

「死にたい・消えたい」という気持ちになるとき

〇「自分で自分を責めてしまうとき」(15人/88.2%)
〇「学校へ行きなさいと言われたとき」(6人/35.3%)
〇「周囲から注意・叱責されたとき」(6人/35.3%)
〇そのほか「学校へ行けていなくて家にいて時間がとまったようになっているとき」「学校になじめなかったとき」「家にも学校にも落ち着ける場所がないと感じたとき」など。

つらさをどうやってやりすごしたのか

〇「ツイッターなどのSNSを活用した」(4人/23.5%)
〇「ユーチューブなどで動画を観る」(3人/17.6%)
〇「テレビやスマホなどのゲームをした」(2人/11.8%)
〇「読書や料理などをした」(2人/11.8%)
〇そのほか「先々の楽しみがまだあると気づいて思い直した」「睡眠薬を飲んで、ひたすら寝ました。ただ、本当につらいときは眠れないことのほうが多いです」「自分の黒い気持ちをノートに書いていた」など。

実施期間:2021年7月30日(金)~8月9日(月・祝)
回答者数:19名(15歳~38歳)

子どもからの相談受け付け先の一覧

①チャイルドライン
0120-99-7777
※毎日午後4時~午後9時
 
②24時間子どもSOSダイヤル
0120-0-78310
 
③よりそいホットライン
0120-279-338
0120-279-226(岩手・宮城・福島から電話する場合)
 
④#いのちSOS
0120-061-338
 
⑤自殺予防いのちの電話
0120-783-556
 
⑥子どもの人権110番
0120-007-110

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