記者コラムで触れた野中広務さんのインタビュー記事です(2008年取材)。

――野中さんの戦争体験を聞かせてください。
 僕は1925年生まれですから、国がだんだんと戦争へと向かい、実際に戦争が始まり、終戦を迎えるところまでを見てきた世代です。実際に私も戦争へ行って見事な戦死をとげるのが男子の本懐だと教え込まれ、自分でもそう思いこんでいました。そして、1945年の3月には召集令状も来ていました。
 
 戦争というのは突然、始まるものではありませんが、いったん戦争が始まると、これは本当に恐ろしく、むごたらしい事態になります。人が人を平気で殺してしまう。軍人だけでなく一般市民までをも巻き込んだ被害が起きるのです。
 
 先日、3月10日は東京大空襲の日でした。米軍からの爆撃によって東京が焼け野原になった日です。いまの東京を見ても、それを想像できないでしょう。思い出す人も少ないかもしれません。ましてや広島や長崎の原爆被害、そのすさまじい状況を想像するのは難しいことでしょう。

――「日本が戦争へ向かっている」と言われますが、本当なのでしょうか?
 神奈川県の座間には「キャンプ座間」と呼ばれる米軍の陸軍基地があります。キャンプ座間の一部には陸上自衛隊も駐屯しています。現在、この座間にワシントンの米軍の陸軍第一司令部がやってきて、それに伴い、自衛隊の司令部も集結すると言われています。これは深刻な問題です。かつて日本は中国大陸を侵略しようとしたとき、朝鮮半島の上部に満州国をつくり、東京にあった関東軍司令部を満州国に移した歴史とダブるからです。
 
 満州国ができてどうなったのか。歴史をふり返れば、南京虐殺が起き、ベトナム、カンボジア、インドネシア、フィリピンへの侵略が始まったわけです。日本軍の内部では、フィリピンを攻めた際に「このまま戦争を続けていくのは無理だ」という趣旨の意見も持ち上がっていました。しかし、それがわかっていても、どうにも止められずに戦争を続けたわけです。
 
 こうした歴史的な背景があるにも関わらず、さきほどのキャンプ座間の「米軍再編」を日本は3兆円もの税金を使って進めようとしているのです。
 
 いま、政治家のほとんどが戦争を見ていません。質問にあるように、戦争へと国が刻一刻と向かっています。戦争への道にブレーキをかけられるのは、私たちの世代が、最後の砦でしょう。戦争が起これば、かならずその傷跡は後世まで残ります。私は死ぬ瞬間まで、戦争を止めるための努力を続けていきたいと思っています。

――フリーター、ニートの問題についてはどう思われていますか?
 規制緩和の「美名」のもとに、小泉純一郎元首相などが、アメリカの市場原理を導入して、アメリカ並みの規制緩和をしました。たしかに経済だけを見れば、好景気になったと言われますが、それはまやかしです。年金制度が崩れ、社会保険が潰され、医療や介護の負担が重くなっていく。大企業は人件費を抑えるためにリストラや早期退職を進め、派遣やパート社員を使うようになりました。正規雇用者と非正規雇用者では、生涯所得格差が3倍になっていると指摘されています。こうしたなかでフリーターやニートが増えました。


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