少年院のなかでも、20歳になった少年たちのために成人式が行なわれる。市長や家庭裁判所、弁護士会、矯正管区、更生保護女性会などの来賓が列席する
彼は「社会で迎えるはずの成人式をここで迎えること、ばあちゃんに見せてあげられないことが残念です。これからの人生を悔いのない充実した日々として送ることを20歳の決意としたい」と、はっきりした言葉で誓い、思わず目頭が熱くなった。
彼は親の虐待を受けて育ち、親代わりで育ててくれた祖母は、非行事件を起こす少し前に亡くなったのだ。少年院長は祝辞で「変えられないのは、過去と他人。変えられるのは、未来と自分」と言われた。
しかし、変えようのない苛酷な過去も向きあって見直すことはできる。重い過去を背負う少年がよき未来をひらくには、人の絆の温かい支えと自分を信じる力を得ることが必要だ。
式後の面会で、「ばあちゃんはきっと成人式に来て、君を見守っていたよ」と言うと、微笑む少年の澄んだ瞳がキラリと光った。(多田元)
読者コメント