不登校新聞

355号(2013.2.1)

かがり火

2013年08月07日 14:59 by kito-shin
2013年08月07日 14:59 by kito-shin


少年院のなかでも、20歳になった少年たちのために成人式が行なわれる。市長や家庭裁判所、弁護士会、矯正管区、更生保護女性会などの来賓が列席する

私は弁護士会から出席した来賓であると同時に、新成人のひとりの少年の元附添人として「保護者」でもあった。成人式では、16人の新成人が舞台に立ち、それぞれ自分の言葉で短い「誓いの言葉」を言う場面が感動的だ。

彼は「社会で迎えるはずの成人式をここで迎えること、ばあちゃんに見せてあげられないことが残念です。これからの人生を悔いのない充実した日々として送ることを20歳の決意としたい」と、はっきりした言葉で誓い、思わず目頭が熱くなった。

彼は親の虐待を受けて育ち、親代わりで育ててくれた祖母は、非行事件を起こす少し前に亡くなったのだ。少年院長は祝辞で「変えられないのは、過去と他人。変えられるのは、未来と自分」と言われた。

しかし、変えようのない苛酷な過去も向きあって見直すことはできる。重い過去を背負う少年がよき未来をひらくには、人の絆の温かい支えと自分を信じる力を得ることが必要だ。

式後の面会で、「ばあちゃんはきっと成人式に来て、君を見守っていたよ」と言うと、微笑む少年の澄んだ瞳がキラリと光った。(多田元)

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