不登校新聞

346号(2012.9.15)

いじめや不登校 “生きる道の障害、とりのぞく” 平野文科相

2017年08月08日 17:05 by kito-shin
2017年08月08日 17:05 by kito-shin

不登校の子・全国ネットら、いじめ問題で文科相に直談判



8月31日、いじめ・不登校の経験者6名と全国ネットが平野博文文科相に面会し、「つらいときは学校に行かなくてもいいと発信してほしい」と訴えた。平野文科相は「命を守らずして何を守るかという思いを持っている。いじめを受けても不登校であっても生きる道はあり、その際の障害をとりのぞくことが私たち大人の役割である」と述べるにとどまった。不登校の子どもたちが文科相に直談判するのは今回が初めて。

面会に臨んだのは、18歳~20歳までの不登校経験者。ハサウェイ雪さん(19歳)は「不登校してからも学校に行かなくていいよと言ってくれる大人はまわりにいなくて、登下校の生徒の姿を見るだけでつらく、心は全然休まらなかった。大臣から『学校は無理してまで行くところではない』と言ってほしい」と訴えた。

また、今夏、北海道で行なわれた全国合宿で採択された、「いじめ・いじめ自殺に関するアピール」も平野文科相に手渡された。

平野文科相は7月31日、閣議後の記者会見で省内に「子ども安全対策支援室」を設置すると発表、翌日発足した。いじめ自殺のみならず、自然災害や凶悪犯罪など、子どもの命と安全にかかわる事態に対し、学校や教育委員会などに職員を派遣するという。メンバーには、警察庁職員や国立教育政策研究所でいじめ問題を専門にしている滝充氏なども含まれている。

同室は9月5日、「いじめ、学校安全等に関する総合的な取組指針」をまとめた。それによると、いじめ問題への対応強化策として①未然防止の観点 から学校・家庭・地域の連携強化②国・学校・教育委員会の連携強化③いじめ隠蔽防止に向けた学校・教員に対する評価制度の見直し④学校と警察の連携強化、などが盛り込まれた。

文科省は平成25年度概算要求における「いじめ対策関連事業」において、およそ73億円(前年度比27億円増)を計上することを決めた。スクールカウンセラーの配置拡充や、いじめ問題で学校を支援する専門チームを全国200カ所に派遣する事業を盛り込んでいる。

2学期を目前に控えた夏休み期間中は毎年、児童生徒の自殺が相次ぐ。

8月13日~9月11日現在、自殺した児童生徒は13人、自殺未遂は3人だった(編集部調べ)。すべてがいじめや学校生活に起因するか否かは定かでない が、このうち「いじめられていて死にたい」という遺書を残していたのが1件、始業式当日に自殺したのは2件だった。(小熊広宣)

平野文科相のコメント

今日、こういう機会に接したこと、私自身うれしく思っております。

初鹿明博議員から「フリースクールの子どもたちが、いじめの問題やいまの教育について体験したことを私に話したい」と聞き、こういう機会を得ました。たいへん貴重なお話を聞かせていただきました。

お話を聞き、とくに私自身が感じたのは、命を守らずしてなにを守るということです。いじめ、あるいは学校の環境になじめず不登校になった方々であっても、生 きる道というのは絶対にあるんだろうと私は思いますし、その障害をとりのぞいていくのが私たち大人の役割なんだろうと思っています。

さきほど「いじめをゼロにする、そんなことはありえない」とみなさんはおっしゃいましたが、まさにその通りだと思います。いろいろなところでトラブルがあって 原因があってしかるべきなんだと思います。必然的に、この世の中を生きていく過程において、そういうトラブルはつねにある。だけれども、それが命にまでか かわる、これだけは絶対に未然に止めなければならない。

また「本人の気持ちをどれだけわかってくれているんだ」とのお話もありましたが、 どうしたらその情報が伝わるのか、悩んでいます。悩んでいる子は、親にも先生にも相談ができず、友だちにも言えないでいる。悩んでいる心の叫びをいち早く感じ、対処する方法、その仕組みづくりをどうしたらいいのか。それが、いま一番悩んでいるところです。できるだけ現場でその子どもの気持ちがわかる教員に なってほしい、わかるような地域になってほしい、わかるような家庭の親子関係になってほしい。そう思っています。先週も全国のPTA保護者の会合があり、 この問題は「ぜひわかってほしい、命にかかわるんだ」と強くお願いしてきました。

私はいま、子どもの命を守る立場の大臣として、そういうことを国民のみなさまに強くお願いをし、私たちも行政の仕組みのなかでできることをやりきる、と。「なにかあったら相談に来てくれ」というように気楽に相談できる環境がいるんだろうと思っています。

また「この点は足りない」という声を届けてください。いずれにしてもせっかく生を得た命ですから、やっぱり生き抜いてほしい。生き抜いてもらうためにも、悩みを誰かといっしょに解決する。そんな環境が学んでいく成長の過程で必要で、そういう環境が整えられるように全力で努力したいと思っています。(編集部要約)

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