連載「学校のナゼ」
全号より始まった「学校のナゼ」。今回のテーマは「校則」。そのなかでも「頭髪」について取り上げることにする。
「校則」といえども、小学校のうちは、登下校中の買い食い禁止や文具などにおけるキャラクターもの持ち込み禁止などが例に挙げられる。しかし、中学に入ると、「学生らしさ」という言葉がしばしば用いられるようになる。それまでの行動規範だけではなく、「制服着用義務」や「規定の頭髪」など、生徒個人の格好のありようにまで踏み込んでくるようになる。
校則ってなに?
そもそも、「校則」とはなにか。「校則」とは、学校を設置する際の必要な設備の有無や教職員数などを各自治体が定めた「学校教育法施行規則」(以下、学則)とは異なり、その学校の教育目標を達成するため、児童生徒の生活全般に関する必要事項を定めた「学校内規」のことである。したがって、各学校が独自に定めることができる。このことから校長の裁量によって、校則の厳しさにも幅がうまれる。「校則」をめぐる学校と生徒間の確執の一つに「頭髪」の問題がある。今回はその「頭髪」をめぐる問題について、過去に起きた訴訟などもあわせて考えていきたい。
「全員丸刈り」違憲じゃない?
「頭髪」に関する裁判としては、1985年に熊本地裁で判決が出された「熊本男子中学生丸刈り訴訟」が代表例として挙げられる。
この裁判は1985年、熊本市の公立中学校校長が男子生徒は全員丸刈りと校則で定めたことに端を発し、後輩を案じた当該学校の卒業生およびその両親が校則の無効確認とともに、校則が憲法14条(法の下の平等)、21条(表現の自由)、31条(適正手続きの保障)に違反するとして損害賠償を求めて提訴したもの。結論から言うと、熊本地裁は先述した原告側の訴えのいっさいを退けた。
理由は以下の通り。まず一つ目に、原告は学校の卒業生であるため、訴えの利益がないこと。二つ目に、憲法違反がないこと。21条についても、中学生において髪型が思想などによる表現である場合はきわめてまれであり、違反はしていない。31条についても、そもそも校則違反したものに何らかの罰を与えることを学校側は予定しておらず、原告にも何ら懲罰を与えていないため、憲法違反ではない。
三つ目として、校長が学校教育の守備範囲を教科活動だけではなく服装や髪型といった風俗に関わる広義の生徒指導が必要だと判断した場合、内容が著しく不合理でないかぎり、校則の制定などは各学校長の裁量権の範囲内であるとした。
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