夏休みが本格的にスタートしました。不思議なもので、この時期、昼間の街中で出会う子どもを見る大人の目がずいぶん変わります。
ふだんであれば、「学校がある時間なのに、どうしたの?」と声をかける大人さえいるのに、夏休みというステキな魔法がかかった瞬間、街中を歩く子どもは、その背景にスッと溶け込んでしまうのです。子どもからしてみれば、先月の自分となんら変わらないのに、です。
毎日が夏休み?
以前、私が取材した不登校経験者のなかには「学校へ行ってないから、毎日が夏休みみたいなものだよ」と、やや茶化した感じで当時をふり返る子どもがいました。
では、不登校の子どもにとって、夏休みの時期は平時と変わらないのか。そんなことはない、というのが私の考えです。
というのも、「みんなが学校に行っている時期に休む」のと「みんなが学校を休んでいる時期に休む」のとでは、精神的な負担感がまったくちがうからです。「そんなの当り前じゃないか」と言われてしまいそうですが、じつのところ、このちがいが、なかなか理解されていないように思います。
不登校の子どもたちはいつも、外部刺激に対するアンテナをあらゆるところに張っています。家の電話が鳴れば、担任からの電話かもしれない。床屋に行けば、髪を切っているあいだに学校の話題をふられるかもしれない。このように、さまざまな場面で敏感になっていることがあります。
ツイッターで先日、ある親御さんの投稿が2万人以上に拡散されていたので、本欄でも全文をご紹介します。『《拡散希望》お店や街の方々へお願いしたいこと。平日昼間に親子連れでいるのを見かけても、「今日は学校はどうしたの?」って聞かないで欲しいです。そっとしておいてください。うちの子は学校へ行っていません。行きたくても行けないのです』。
ダメな約束とは
どの子も学校へ行かなくていい。昼間から街中を歩いていても目立たない。そんな夏休みは、不登校の子どもにとって、ふだんよりも心を落ち着かせることができる、つかの間の休息です。
だからこそ、この時期にやってはいけないことがあります。「2学期から学校に行くよ」という約束を親子間で交わすことです。親の背後に漂う「学校に行ってほしいオーラ」を感じ取り、子どもが焦れば焦るほど、ついこの約束を交わしてしまうことがあります。
2学期の始業日は決まっていますから、この約束を交わしたとたん、夏休みと同時に、再登校までのカウントダウンが始まります。相反する2つのことが頭にひっかかった状態では休めないどころか、かえって悪影響です。休むときは、中途半端に休まない。これがコツだと、私は思います。(東京編集局・小熊広宣)
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