不登校新聞

540号 2020/10/15

「不登校だからうまくいかない」私の意識が変わったきっかけは

2020年10月13日 13:53 by motegiryoga

 今回執筆いただいた、ひなさんは中学生のときに不登校を経験した。不登校が終わったあとも、「自分が不登校だったこと」に苦しんだという。ひなさんに、ご自身の思いを書いていただいた。

* * *

 中学1年生の終わりごろから卒業するまでのあいだ、私は不登校でした。中学を卒業したあとは、中学時代の知り合いが誰もいない、不登校の子を受けいれている全日制の高校に進学しました。

新しい自分に期待していた

 「今までマイペースに別室登校していたのに、ちゃんと通えるのだろうか」「また学校へ行けなくなるときが来るんじゃないか」と高校生活への不安はありましたが、あこがれていた、かわいい女子高生になれるかもしれない、という期待も私は同時に感じていました。

 そして、何より「もう不登校じゃない自分になるんだ」と新しい生活に意気込んでいました。でも、結局、私は高校で「不登校だった自分」に苦しむことになったのです。

 高校に入学してから、しばらく経つと、ささいなことで友だちとケンカをしたり、失恋をしたり、たくさんの人間関係の壁にぶつかりました。

 友だちから少しキツい言葉を言われたり、指摘をされたりするだけで、すぐ落ち込んでしまっていたのです。

 なぜちょっとしたことで落ち込んでしまうのか、私はその原因を考えてみました。そして、「原因は私が不登校だったからだ」と思うようになったのです。

 「不登校だったとき、私は自分に優しくしてくれる大人としか、すごしていなかった。まわりの人から厳しい言葉を投げられることに慣れてない。だから私の人間関係は、うまくいかないんだ」と。

 それ以来、人間関係で何か少しでもうまくいかないことがあると「不登校だったからだ」と考えることが、私のクセになっていました。

 自分に落ち込みながらも、私はなんとか無事に高校を卒業することはできましたが、「不登校だからうまくいかない」という自分の価値観は、結局、高校を卒業するまで変えることはできませんでした。

不登校は私のすべてではない

 しかし私は今、不登校は、あくまで自分にとってカゼをひいたような出来事のひとつにすぎず、私自身を表す、すべてではないと思っています。そう思えるようになったのは、社会に出てからの経験が大きく影響しています。

今、私は病気や身体の障害で不自由を抱えた患者さんのリハビリのお手伝いや心のケアをする、作業療法士として働いています。

 リハビリを通して患者さんからお話を聞いたり、いっしょに働く同僚と、たわいもない世間話をしたり、働き始めてから人の話を聞く機会が増えました。

 いろいろな世代や立場の人の話を聞いていくなかで、私はまわりの人も私と同じように、人間関係やさまざまなことで悩んでいることを知りました。

 そして、まわりの人の悩みを聞いていくことで、「うまくいかないときは、誰だってうまくいかないんだ。不登校経験者じゃなくても悩むことはたくさんある。不登校だったから、うまくいかないわけじゃないんだ」と考えが変わっていきました。

 社会に出てからお給料をもらえたことも、私にとっては自分の意識を変えるきっかけになりました。

 働いてお金をもらえることで「不登校の私でも、不登校をしてない人と同じように仕事をして、ちゃんと生活できるじゃん」と実感し、自分に少し自信を持てるようになったからです。

 私の場合は社会に出たことで、「不登校だから」という考えから抜け出し、ラクになることができました。

 今でも、患者さんや同僚との関係がうまくいかず、落ち込むことはありますが、過去の経験にとらわれて、必要以上に悩むことはなくなりました。

 「不登校だからダメなんだ」という私の考え方はとても狭くて不自由なものだったと、今では思っています。(不登校経験者 ひなさん(25歳))

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