大津いじめ自殺が起きてから、1年3カ月後、第三者調査委員会による「調査報告書」が提出された。調査委員は市側と遺族側双方が推薦した計6名。委員には教育評論家・尾木直樹氏、弁護士・横山巌氏(委員長)も名を連ねた。委員らは延べ56人から計95時間に及ぶ、直接の聞き取り調査を実施。ほかの報告書と比べても非常に事件経過が緻密に記された報告書を作成した。
◎ なかった「自殺の練習」
報告書からは、いままでの報道があまりに断片的で、不確かであったことを痛感させられる。
たとえば「自殺の練習」。大津事件がクローズアップされたのは、この「自殺の練習」からであった。その後、いじめ現場を教員らが見ていたこと、市教委が校内アンケート結果を公表していなかったことなどに注目が集まり、しだいに報道が過熱。しかし、そのきっかけである「自殺の練習」は「させられていない」と調査委員会は結論づけた。加害少年たちが教室の窓から身を乗り出し「やってみろ」と亡くなった少年に対し、再三、声をかけていたこともあったが、「自殺の練習」ではなかった。情報ソースは、少年らの同級生の兄弟が回答した校内アンケートであった。また「多額の金銭要求」や「葬式ごっこ」も報道されたが、調査委は「事実は認められない」と結論づけている。本紙でも、少年が「ぼく、死にます」という電話をしていたことを報道したが、おそらく、その電話はなかった。
なぜこのような事態が起きたかといえば、校内アンケート結果や訴状内容に基づいて報道したからである。誤報とまでは言えないが、現段階では事実とは異なると言える。調査委は、行きすぎた報道により、調査に支障が出たことや無関係の者にまで誹謗中傷がおよんだことを取り上げ、誠意ある報道を提言していた。これらの点についてメディア自らが報道しないことには憤りを感じている。本紙でもこの指摘を真摯に受けとめ、正せる事実は正し、いま一度、大津いじめ自殺はなんだったのかを問い直すため、短期連載を開始する。
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