連載「精神現象」
2つの臓器移植法改正案のうちの斉藤案は、脳死下での臓器移植を、子どもへと拡大しようとするものだ。しかし、子どもを脳死と診断するための基準に対しては、根底的な疑義が提出されている。2005年の日本児童青年精神医学会で、小児科医の杉本健郎氏は、脳死の診断基準を満たした小児例でも身長が伸びるといった理由を挙げ、診断基準は「広汎かつ重篤な脳の壊死を正確に予測」していないと指摘していた。平たく言えば、脳は生きているのに、診断基準によれば死んだと判定されてしまうということだ。
海外における脳死の診断は、日本よりもっと粗雑だと言われる。「〈脳死〉米国・カナダで判定の3人、日本帰国後に意識回復」という毎日新聞の記事によると、米国では頭部外傷で脳死と判定された男性が、自発呼吸をしていたにもかかわらず、そのまま臓器を摘出されてしまった。また、米国・カナダの判定では脳波を測定せず、とくにカナダでは病院ごとに異なった判定基準をもうけているという。
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