不登校の理由は「先生との関係」も要因の一つだった、という中学生は、教職員が回答した場合と、子どもが回答した場合では16倍の開きがあることが、教育学者・内田良氏の分析で明らかになった。比較した回答結果は、ともに文科省が実施した調査への回答。本紙では以前より問題指摘してきたが、内田氏に分析を依頼したところ、認識に大きな開きがあることが明らかになった。なお教職員が回答した調査結果は、不登校についての国会審議や有識者会議などで、かならず参照されるなど「不登校施策の基盤資料」にもなっている。

 教育学者・内田良氏は、平成18年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(以下・問題行動調査/学校・教職員が回答)における中学生の結果と、平成18年度当時中学3年生だった不登校生徒を対象にした「追跡調査」(不登校した本人が回答)の結果のうち、「不登校の理由」を比較検討した。検討の結果、親・友人・教職員との関係は、両調査の共通項目であるなどの理由から比較が可能と判断。教職員と本人の回答が16倍も開いた「教職員との関係」については、「生徒本人は教職員との関係に『原因あり』と感じていても、教職員はそのことを自覚していないと言える」と分析した。


※問題行動調査と追跡調査の比較データ。「不登校理由:教職員との関係」以外で「親との関係」「友人関係」は共通項目であり比較可能。



文科省が招いた有識者からも


 問題行動調査への疑問はほかの専門家からも指摘されている。文科省が設置した有識者会議「不登校に関する調査研究協力者会議」の座長であり、追跡調査の座長を務めた森田洋司氏も、今年7月28日の講演会にて両調査の結果には「ものすごいズレがある」と指摘。さらに追跡調査は「(問題行動調査が)どうもおかしいから、私が立ち上げた」との問題意識が出発点だったことを語った。
 
 本紙では10年以上前からこの問題について指摘。2005年、本紙では、両調査を比較して大きな隔たりがあると指摘したうえで「当事者を原点にしないと対策は本人の思いと外れてしまい、かえって当事者を苦しめてしまう」(2005年8月15日号/代表理事・奥地圭子)と論じている。
 
  *  *  *
 
 問題行動調査が始まって今年で50年。この間、累計300万人の不登校がいた。内田氏の指摘は、累計300万人の不登校の実態と、施策基盤となる調査結果が大きくかい離していた可能性を示唆している。それは、ズレた認識をもとにした不登校施策によって、50年間、不登校した者は苦しまされてきた、という可能性をも意味する。いずれにせよ問題行動調査の手法および、結果については疑問を禁じ得ない。今月末、文科省は新たな調査様式にて問題行動調査の結果発表を行なう。(本紙編集長・石井志昂)

問題行動調査(教職員回答)とは


 文科省から毎年発表される「問題行動調査」は、全不登校児童生徒の「人数」「不登校の要因」「効果的だった指導」などを調査している(調査開始1966年~)。「不登校の要因」については「教職員」が回答。また「いじめ」「自殺」「校内暴力」なども不登校とあわせて調査している。

追跡調査(本人回答)とは

 
 文科省が実施した不登校経験者に対する調査。これまで2001年と2014年に調査結果を発表している。2014年調査では2006年当時中学3年生で不登校だった者に対しての調査が行なわれた。調査したのは「不登校生徒に関する追跡調査研究会」(座長・森田洋司氏)。なお、1998年に行なわれた第1回目の追跡調査では、本人の応諾なしに調査が行われることなどが問題視された。「指導要録を本来の目的外に使用するため、個人情報保護に抵触する恐れがある」などの理由から、大阪、和歌山、広島、滋賀、奈良の計5府県教委が協力を拒否している。