不登校の子を持つ保護者からの相談で、かならずと言ってよいほど聞かれるのが「学校へ行ってない場合、学校の成績って、どうなるのでしょうか」です。成績というのは、学校からもらう通信簿や成績表のことです。たしかに授業も受けず、テストも受けていない場合の成績表はどうなるか知らない方も多いです。
質問にそのまま返答するならば、文科省の通知が答えです。
「学校が把握した当該学習(学校外の学習)の計画や内容がその学校の教育課程に照らし適切と判断される場合には、当該学習の評価を適切に行なう指導要録に記入したり、また、評価の結果を通知表その他の方法により、児童生徒や保護者、当該施設に積極的に伝えたりする」。
また「IT等を活用した学習活動を行った場合,校長は(中略)、その成果を評価に反映することができる」(※)というものです。
ようするに、学校の成績はかならずしも学校のなかの学習だけに制限されてはいない、ということです。
実際に、私たちのフリースクールで行なった学習内容を在籍校に伝えたり、学校の定期考査をフリースクールで実施したりすることが成績評価に反映された例は少なくありません。
しかし、その一方で、評価がつかないケースもあります。学校によって理解や対応に差がある現状は残念ですが、不登校であっても、学校による子どもの学習評価を適切に行なうことは可能です。
フリースクールを利用する前に
相談では、それらをお伝えし、まずは「子どもが学びに向き合えるように落ち着ける環境をつくっていきましょう」と私は勧めています。
学校を休み始めたころは、たとえば勉強はおろか食事や入浴、着替えなどのふだんの生活が困難になることがあります。
少なくなってしまった本人のエネルギーは最小限の生命維持に費やされ、ほかのところにまで手がまわらないという状況になりがちだからです。
比較的落ち着いて、自分のやりたいことを始めているなら、私はそれを「学習」と捉えます。いろいろなことが活動を通して自分のなかに吸収されているからです。
不登校のよいところは、学校の基準である「学習指導要領」の枠組みにとらわれないことだと思います。
もちろん不登校でも体験的に身につけたことが「学習指導要領」の内容に含まれていることは多いです。
でも、順番どおりではありません。場合によっては上や下の学年で学習する内容もあります。
ですから、不登校の学びは虫食いの葉っぱのようにボコボコと穴があいていますが、一定の基礎的な学力は身についていきます。
そのようすは保護者の方の多くが体験していると思います。「まだまだ子どもで、何もできないと思っていたのに、気がついたらいろいろとできるようになってた」とか「一丁前のこと言うから、わかっているもんだと思っていたのに全然わかっていなかった」といったようなことです。
でも、虫食いの葉っぱでも食べ続ければやがて全部なくなるように、生きるうえで必要な知識を習得していくことができます。現に、今も不登校経験者は社会のなかにたくさんいます。
ともあれ、質問の本質は、成績というより「わが子が不登校になっていく変化を、どう受けてとめていくか」だと思います。
不登校を受容することの難しさは、本紙の記事からもわかります。それだけに、情報収集はもちろん保護者の会などで誰かに話を聞いてもらったり、味方をつくったりすることがとても大事になります。
そうして、まずは保護者自身が安心を得ることから、家庭の居場所が生まれ、子どもの学びにつながっていくように思うのです。(庄司証)
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※文科省通知「不登校への対応の在り方について」「不登校児童生徒が自宅においてIT等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取り扱い等について」より抜粋。
(しょうじ・あかし)80年生まれ。「函館圏フリースクール すまいる」代表。不登校・高認・進学支援にとり組んでいる。元大学非常勤講師。
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