5月の3週目、同伴登園を続けていましたが、いよいよ『ママ離れミッション』をスタートしました。
方法は、たけると話し合って決めました。
しばらくは「着替えて園庭で水やりをするまでは、いつもどおり園内でママ待機」「たけるの心の準備が整ったら、たけるから『ママもういいよ』を申し出る」
「園舎そばに停めた車の中で待つ」「サポートが必要なときだけ呼んでもらう」と、スモールステップで慣らし、数日で「ママは最初から駐車場での待機」へ移行。
翌日も、翌々日も、それで大丈夫でした! それ以上にたけるは「ママがいるときより楽しいよ!」と興奮気味に報告しにきます。
ママがいなくても大丈夫な自分を誇りに思い、自信がついたようすでした。
5月26日、本格的なママ離れの日です。たけるを幼稚園に送り届けた私は、もう園内には入りません。
たけるとの約束で、玄関あたりにいて「帰っていいよ」と言われるのを待ちます。
作業が終わり、子どもたちがブランコで遊び始めたころ
「もういいよ!」とたける。
行事や活動で、サポートが必要なときはママが付き添うので、いつでも呼んでいい、呼ばれたらすぐ行く、と約束しているし、先生とも意思疎通できているのだから、あとは大丈夫! 心のなかでそう確認しながら帰宅しました。
ところが、自宅へ帰って一息つき、ようやく訪れた『ママ離れ』を実感したのもつかの間、1時間足らずで先生から電話がきました。
想定はしていたものの、ちょっと心がざわっとしました。
電話口はたけるです。「ママ? 来てほしいんだけど、いつ来れる?」曇りのない元気な声でした。いったいどうしたんだろう。すぐに行くと伝え、行ってみると、
楽しそうに遊んでます。「どうしたの?」と聞くと、「ちょっと来てほしくなったの」。なんの躊躇もなくあっけらかんとした表情で答えました。
そして、外でママの膝上に座ることを希望し、充電しながら、楽しい遊びの話。
5分ほどお話と充電をしたら「もういいよ」と言って、こちらをふり返らずに戻っていきました。
私が幼稚園生だったころは、不安だとか寂しいとか言わない代わりに、お別れがとても苦手で、泣きそうになるのをガマンして、何度もふり返っていたことを思い出しました。
でも、たけるはふり返らない。ガマンはしていない、と感じられホッとしました。
以後、急に呼び出されることはほとんどなく5月を終えました。思い起こすと、たけるの一連の行動は「お試し行動」だったのかもしれません。
先生は本当にすぐ連絡してくれるのか、ママは本当に来てくれるのか。それをたしかめること、そして大人がそれに応じることは、たけるが安心を手にいれるために必要なことだったのでした。 (文・絵 斎藤暁子)
■著者略歴/(さいとう・あきこ)『HSC子育てラボ』代表。心理カウンセラー。息子たける(9歳)と精神科医の夫は、ともに敏感・繊細気質。著書に『HSCを守りたい』(風鳴舎)など。HSCとは/「Highly Sensitive Child」の頭文字を取った「HSC」は、心理学者エレイン・N・アーロン氏により提唱された概念。「ひといちばい敏感な子」などと訳されている。HSCは障害や病気の名前ではなく、生まれもっての気質。
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