不登校新聞

526号 2020/3/15

だから私は「子どもの安心基地」をつくっていきたい

2020年04月16日 13:37 by shiko

連載「わが家が目指したのはHSCの安心基地」最終回

 私は10年ほど前から精神科医の夫の診療に立ち会ってきました。

 人の心や過去に深く接し、心理カウンセラーとしての仕事も5年ほど前から本格的に始めました。

 そのなかで、社会不安障害、適応障害など、苦しみを抱えてつらい思いをしている方々から、学校や自分とは合わない環境で無理にがんばって適応しようとし続けて、ストレスでいっぱいになったり、心に傷を負う経験をくり返してこられたりという話をうかがうことがありました。 

 その方々の多くに、「繊細さ・感受性の高さ・思慮深さ」といった特徴が共通していると感じていました。

 その後、知人からHSC(Highly Sensitive Child=生まれつき繊細さや感性の鋭さ、慎重さを持つ『とても敏感で感受性が高い子ども』)について耳にしたことをきっかけに、話を聞いてきた方の特徴こそがHSCだと知ったのです。

 そして、そのHSCの特徴は、息子と夫に、あまりにもぴったり当てはまっていて、まるで答え合わせでもしているかのようでした。

 学校などの集団や組織では、HSCの気質から起こる違和感や、強い感情の反応は受けいれられにくいものです。

 HSCは、適応を強いられると精神的にとても疲弊してしまいます。また、敏感で繊細な感覚や反応を否定されたり無視されたりすることで、子どもは深く傷つき、自尊心や自己肯定感が削がれていってしまいます。

 孤独感や不信感、そして、恐怖や敏感さの高まりは、育っていく過程の体験がとても影響しているのです。

本人とまわりの理解が重要

 本人とまわりの理解が重要だからこそ、私はHSCをもっと広く、多くの人に知ってもらい、HSCが持つすばらしい力を発揮できる場が増えることを願っています。

 また、無理な登校が促されることで、将来にまで影響を及ぼすような心の傷を負うこともあります。

 知らなかった、わからなかったという理由で、子どもに心の傷を負わせてしまうことは防ぎたい。

 そのためにも、学校生活のつらさの一因に、HSCの、とても敏感で繊細な気質があるということを知ってもらいたいと願い、活動しています。

 気質が学校に合わなければ、その子にとって学校は地獄だと言われます。ずっとガマンして学校へ行き、苦しみに耐え、張りつめていた糸が切れると「自分が悪いのだ」「至らないのだ」と自責する。

 そうやって大人になった方が抱える「心の傷」がどんなものかも、ほかの人にはなかなか理解されず、その傷がさらにえぐられることもあります。

 「そのような苦しみや悪循環を止めたい!」 カウンセリングのたびに思ってきたことのひとつです。 

 仕事や生活に支障をきたすほどの生きづらさや苦しみは、本来その人の責任で抱えたものではないにもかかわらず、回復は容易ではありません。

 負わなくてよかったはずの傷や抱えることになった自己否定感や自責感、それらを持つ方々の歴史に、日常的に触れているからこそ「生きづらさや苦しみを防ぎたい!」。そう強く思うのです。

 本来HSCは、個性的ですばらしい魅力や才能に溢れていて、その子に合った環境や関係を選択できていれば、その子らしさが発揮され、自尊心や自己肯定感が削がれることなどありません。

 否定されることなど、何ひとつありません。

 気質に応じた、必要な環境や接し方があることや、子どもによっては学校以外の学びの場の選択肢が必要であること、それが「安全で安心と感じられるおうち」であることが最大の望みである、という子も存在するということを、声を大にして言いたいと思います。

「これが当たり前の社会になるように」。(文・絵 斎藤暁子)

■著者略歴/(さいとう・あきこ)『HSC子育てラボ』代表。心理カウンセラー。息子たける(9歳)と精神科医の夫は、ともに敏感・繊細気質。著書に『HSCを守りたい』(風鳴舎)など。HSCとは心理学者エレイン・N・アーロン氏により提唱された概念。HSCは障害や病気の名前ではなく、生まれもっての気質で。「ひといちばい敏感な子」などと訳されている。

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