連載「渡辺位さんの言葉」


 長男の強迫性障害をなんとかしたいと辿り着いた親ゼミに通いながら、思いがけず少しずつ本当に少しずつ、自分のこともまあまあ悪くないと思えるようになっていった。
 
 それまでの私は「いい子でいなくちゃ」の続きで「よい妻・母で」とあるべき姿に執着していた。それが本当に家族に望まれている姿なのかなどと、考えることすらなかった。
 
 あるとき、子どもの状態や行動を見て、不安になってしまう親たちの言葉を聞いたあとに渡辺先生がおっしゃった。
 
 『子どもを何とかする前に、子どもの気持ちになってみる』。
 
 言葉や行動の裏にある気持ちを『理屈ではなく感覚でとらえる。共感する』。
 
 それは同情ではない。良い悪いの評価もない。
 
 『ありのままの気持ちを受けとめる』。
 
 その言葉に涙が溢れた。私はいい子でなくてもよかったんだ。私の気持ちを受けとめてくれる親がいなかっただけなんだ。すっかり心が子どもに戻っていた。
 
 しかし、感じることはとても難しかった。目前の光景にふりまわされて、つい頭で理屈で考えてしまう自分がいた。「どうして僕の邪魔をするの」と言われてしまう私がいた。そのたびに、自分がいかに世間体や常識というものに縛られているか思い知らされた。


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