連載「不登校の歴史」


 2011年に入る直前の年末に起きた茨城県取手駅の事件に触れないわけにはいかない。
 
 27歳の男性が通学・通勤時のバスに乗りこみ、無差別に乗客を切りつけたのだった。彼は1年前に会社をリストラされ、そのころから今回の事件を計画していた。そして、事件発生の数日前に実行を決意したという。父と2人暮らしで、所持金はゼロだった。警察での調べに「誰でもよかった、自分の人生を終わりにしたかった」と語った。
 
 この事件は、その2年前、08年6月に起きた秋葉原事件を誰もが想起したのではないか。そのくらい事件の構造は似ていると多くの人が感じた。20代~30代の若者たちの生き難さを象徴していた。
 
 私は取手の事件のほんの10日前、ある葬儀に参列していた。30歳男性が自殺したのだった。ある会社をリストラされた後、2年間で、100社以上、就職活動をし「これでだめならもうムリ」と思っていた会社からも不採用通知が来た。彼はまじめで誠実な人柄であり、仕事も一般的にこなせる能力を持っていた。しかし、非正規雇用が4割近いこの国は、ひどい格差社会で、リストラにあうと再就職は困難を極めた。希望を持てない若者たちは次々と追い詰められる状況にあった。彼は不登校をした経験はあったが、進学し、いったん就職した後のリストラだった。取手の事件は、彼のことも想起させた。


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