夏休み明けの子どもの自殺が注目を集めるようになり、今年もさまざまなキャンペーンが行なわれました。少しずつではありますが、「学校を休んでいい」ということが世間に知られてきている実感があります。
図書館、児童館のみならず、フリースペ―ス、フリースクールなど、子どもたちに「居場所」を提供する取り組みに関する報道もよく目にするようになりました。
わが家の長男は、中学3年生の夏休み明けから、学校に行きしぶるようになりました。夏休みの終わりが刻々と近づいてきたとき、さぞ怖かっただろうと思います。
外出しない…これが続いたら
その後、夫や私からの登校催促によるゴタゴタがあり、高校を3日で辞めた長男はまったく外出しなくなりました。とりわけ、同世代の子どもたちとの接触を嫌がりました。
「このままの状態がずっと続いたらどうしよう」「家にばかりいて、家族としか会話しない生活で大丈夫なのだろうか」など、当時の私は息子を見るたび、悩んでいました。
長男を不安に見つめる私のまなざしは、「高校を辞めて、これからどうしようか」と悩む長男をますます不安にさせていました。私はそのことに気づいていなかったんです。
家を居場所にすればいい――。そう気づいたのは、故・渡辺位先生のお話がきっかけでした。
「森にたくさんの木がまとまって生えていました。しかし、1本だけポツンと離れた場所に生えてきた木があります。離れて生えてきた木に、責任はないのです。その木に、こんなところに生えてどうするんだと、冷たい北風を吹きつけるのか。それとも暖かい日差しと恵みの雨を送るのか」という『渡辺版イソップ物語』とも言うべき内容でした。
先まわりしなくても大丈夫、間に合うから
この話を聞き、やっと気がつきました。「長男を家以外のどこか別の場所に連れて行くのは無理だ」ということに。
今思えば当たり前のことなんですが、親の私がよいと思ったからといって、長男も気に入るとはかぎりません。むしろ、長男としては「家が居場所になってほしい」という思いを持っていたんです。
子どもが学校に行かなくなったとき、親はつい「じゃあ、フリースクールや塾など、どこか別の場所を」と探してしまいます。しかし、お子さんが外に出たがらないときには、もしかしたら「私はまだ家にいたいんだ」ということかもしれません。
親としては手遅れにならないよう、つい先まわりして動いてしまいがちですが、子どもが「友だちがほしい」「家にいるだけでは物足りない」などと言い始めてから、別の居場所を探す。
それでもじゅうぶん間に合うから、大丈夫です。(関川ゆう子)
■【プロフィール】
(せきかわ・ゆうこ)長男が中学3年生のときに不登校になる。以来、18年に渡って「登校拒否を考える会」(東京)に毎月参加している。全国不登校新聞社理事。
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