不登校新聞

464号 2017/8/15

不登校で焦る息子を救った父の一言

2017年08月10日 17:11 by koguma
2017年08月10日 17:11 by koguma



 先日、鎌倉市中央図書館に行ってきました。2年前の夏、「もうすぐ二学期。学校が始まるのが死ぬほどつらい子は、学校を休んで図書館へいらっしゃい」というツイートをして、大きな反響を呼んだことは記憶に新しいところです。

一日いても誰も何も言わないよ

 ツイートのなかで私がもっとも注目したのは「一日いても誰も何も言わないよ」という一文です。

 子どもが学校に行かなくなったとき、まわりにいる大人はいろんなことを言います。「どうして行きたくないの?」と理由を尋ねてきたり、「学校には行かなくてもいいけど別の場所に通ってみるのはどう」と提案してみたり。

 そのとき、子どもの多くは学校のことでヘトヘトに疲れています。そんなときに説明を求められたり、対案を示されたりするということは、「何もせずにここにいることは許されない」という暗黙のメッセージになりかねません。

お前は俺の息子、何もしなくていい

 松島裕之さん(「フリースクール全国ネットワーク」事務局長)に不登校体験談をうかがったときのこと。16歳になった松島さんは、とにかく焦っていました。バイトの面接になかなか合格しなかったからです。

 ある日、松島さんは父に「やる気はあるけれど、年齢がネックになってバイトがなかなか見つからない。18歳まで猶予をください」と打ち明けました。私がいいなと思ったのは、それに対する父の返答です。「18歳だとか猶予だとか、そういうことにこだわらなくていい。俺の子どもである以上、この家に住むために何かする必要はない」。

 それから1年後、ゲームに飽きた松島さんは、週2日、1日3時間のアルバイトを始めるに至ります。

 その場に居ることで何か言われることもなければ、されることもない。そこに留まるために必要なこともないし、居るからといって何かしなければいけないわけでもない。人間が本来、「ここが私の居場所だ」と感じるには、そういう要素が欠かせないのではないかと思います。そして、そういう居場所の存在が、「早く動き出さなきゃ」と焦る不登校の子どもの気持ちをやわらげるのだと私は思います。(東京編集局・小熊広宣)

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