「ひきこもってつらかったことは何ですか?」と聞かれれば、「何者でもないという不安を感じたこと」だと答えます。
私が最初にひきこもった25年ほど前、まだ「ひきこもり」という言葉は一般的にほとんど使われていませんでした。また、母に精神科や心療内科に連れて行かれたときも、どの先生からも「ひきこもり」という言葉は出ませんでした。
先生も明確な診断をくだせず、親はもちろん私自身も自分の状態をうまく説明できない状況でした。今なら専門家はもちろん、「ひきこもり」という言葉だけなら近所の八百屋のおばちゃんも聞いたことがあるほど、この言葉は定着しました。
アイデンティティの危機
日本人が日本人であること、また会社員が会社員であることは、あまりにも当たり前でふだん意識することはほとんどありません。しかし海外へ行ったり、失業したりすれば日本人であることや会社員であることを意識します。つまり自分が何者であるかということは、学生や会社員という「肩書き」がなくなると急に意識され不安になります。
これはいわゆる「アイデンティティ(自我)の危機」と呼べるものですが、ふだん意識されないだけにどれだけ不安な体験かということがなかなか理解してもらえません。
読者コメント