連載「仮説なんですが…」vol.21
日本の昔話で、ぼくがもっとも愛着を持つ話のひとつに「三年寝太郎」がある。
むかし、ちっとも働かない若者がいた。村では「寝太郎」とあだ名されていた。寝太郎はあるとき起き上がって、町へ行き、鳩と提灯を買ってきた。そして夜になると、となりの長者の庭の松の木に登り、大声で叫んだ。「長者よ、よく聞け。われこそは鎮守の森の神様である。今夜はお前の家の家運を予言しに来た」。長者は夜中に大声が聞こえたので、驚いて縁側に出てみた。すると「お前の家の一人娘に、となりの寝太郎を婿に取らなければ、お前の家はたちまち傾くであろう。いいか、わかったか。では余は鎮守の森に帰るぞ」という声が聞こえた。寝太郎は提灯に火をつけて、鳩の脚に結んでぱっと放した。すると明かりがすーつと鎮守の森の方へ飛んでいったので、長者は本気にして、翌朝起きると一番に寝太郎のところへ行き、「鎮守の神様のご命令だから、ぜひ、うちのひとり娘の婿になってくれ」と言った。こうして寝太郎がとうとう長者の家の婿になって、それからはまともに働いたと。
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