08年4月29日、本紙創刊10周年記念集会「不登校の森から生まれたもの」を開催した。基調講演は漫画家・萩尾望都さん。萩尾さんは、自分が読んだ本を紹介しながら、「成長と冒険」をテーマに話された。萩尾さんは、あまり講演されない方であるが、実行委員会からの要望で実現。抄録を掲載する。
みなさま、こんにちは。紹介にあずかりました萩尾望都です。話をすると言っても、私は口べたで、物忘れもひどいので、みなさん、おおらかな気持ちで聞いてください(笑)。私ができるお話は最近読んでおもしろかった本の紹介ぐらいなので、それをお話しします。
まず最初に、紹介したいのは、『新世界より』(著・貴志祐介)。夕方の校庭や公園にドヴォルザーク作曲の「新世界」が流れ、みんなが家に帰り始める。そういうどこにでもある街の風景から物語がスタートします。でも、読み進めていくと不思議なことに気づきます。主人公が住む街が「クルス66」という名だったり、街の住人のほとんどが超能力者だったり。最初は現代の話なのかと思わせといて、途中から「1000年後の話なんだ」とわかるような仕組みになっています。物語を通して1000年のあいだ、地球に何があったのか、なぜ超能力者が生まれたのか、謎が解き明かされます。最近、一番おもしろかったSFです。
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