不登校新聞

480号 2018/4/15

身長100cmで「2児の母」にコラムニスト・伊是名夏子さんに取材 ポジティブなのは仕方がないから

2018年04月15日 15:13 by motegiryoga



 コラムニスト・伊是名夏子さんには「骨形成不全症」という障害がある。生まれつき骨が弱く骨折しやすい病気だ。そんな障害を抱えながらも、伊是名さんは出身地・沖縄から18歳で上京し一人暮らしをはじめた。そして今は結婚し2人の子どもを育てている。「障害があるからたいへん、と思ったことがない」と語る伊是名さんに、不登校経験者の楢崎唯さん(24歳)と山内太二郎さん(21歳)がインタビューした。

――私は不登校や身のまわりの環境をハンデと感じ、悲観的になることがありました。伊是名さんは自分と健常者を比べて落ち込むことはないですか?(楢崎)

 あんまりないですね。私は生まれたときから骨が折れやすい病気で、ずっと車椅子生活だったから、歩けた時期がなかったんです。だから歩けるってどんなことか、そもそもわからないんですよ。

 たしかに歩けると便利そうだなとは思うけど、うらやましいとまでは思わないです。だって、私には健常者の姉が2人いますが、彼女たちはそんなに楽しそうじゃないんです。子どものころ、親が姉にゴミ出しを頼んでいたのを見ると思ったんです。「たいへんだな。歩けたら朝6時に起きてゴミ出ししなきゃいけないんだ」って(笑)。

 それに、歩けなくてもできることだってたくさんあります。たとえば友だちとご飯に出かけるとき、お店の予約や集合時間の連絡などは私の仕事です。私はそういうことが得意だし、やってあげれば相手も楽ですよね。私といっしょに出かける人は、私を抱っこしたり手伝いをしなきゃいけない。でも私も得意なことを活かせば、人を助けてあげられる。大事なのは助け合いです。どんな人でも、関係性のなかで、自分の役割を発揮できるポジションがあるんだと思います。

人の力を借りて

――雑誌のインタビューで「まわりの人の力を借りて生きてきた」と言っていました。私はつらいことがあっても、人に言うことができなかったのですが、伊是名さんはどういう過程を経てSOSを出せるようになったんですか。(楢崎)

 昔は、なんでも自分ひとりでやりたいと思っていたんです。小・中は養護学校(現在の特別支援学校)で、先生1人に私1人の教室でした。それがあまり楽しくなくて、高校はまわりに反対されたけど普通学校へ行きました。その後も東京でひとり暮らしをはじめて、洗濯物を干したり料理をつくったりと、時間はかかるけどがんばっていました。不便なことはあったけど、自分ひとりでできることが楽しかったんです。

 そんな考えが変わったのは、デンマークに留学してからでした。デンマークの人は自分のできること、できないことを初対面の人にもはっきり言います。人にはできることと、できないことがあるのがあたりまえで、できないことはおたがい補い合いましょう、というのが「あたりまえ」なんです。それを見ていたら「ああ、私ももっとできないことを言ってもいいのかな」と思えたんです。それで、デンマークから帰ってきて、はじめてヘルパーさんを雇うようになりました。

 さっきも言ったように、大事なのは「助けること」ではなく「助け合い」です。私の持論ですが、誰かに助けられた経験がある人は、誰かをじょうずに助けてあげることができると思うんです。ヘルパーさんのなかにも、ちょっと上から目線だったり、手助けが一方的な人はときどきいます。そういう人は、「助けられてきてないんだな」とすぐにわかります。

 だからSOSを出すことを恐れなくても大丈夫。自分がSOSを出すことで、いつかだれかを助けてあげることができるかもしれないですよ。


写真左から取材者・山内太二郎さん、取材者・楢崎唯さん、伊是名夏子さん

――小さいころから、他人からの評価が怖くなりました。まわりからの評価にどう向き合えばいいと思いますか。(楢崎)

 人の評価が気になるときは私にもあります。でも、「どれだけ気にしないか」も大切です。世の中好きな人もいっぱいいるけど、嫌いな人もいっぱいいます。自分のことを助けてくれる人や認めてくれる人もいるけど、認めてくれない人もいる。だったら自分が嫌いな人や自分を認めてくれない人には、わかってもらうようにがんばる必要はないのかな、と思います。

 最近、文章を書くお仕事をするようになって、ある方に言われたのが「7・3の法則」です。7割の人はほめてくれるけど3割の人は批判する、ということらしいです。たしかに何を書いても批判してくる人はいて、それはもう、そういうことなんだと割り切って、気にしなくてもいいと思っています。

本当はみんなといっしょがいい

 逆に、今は昔ほどマイノリティへの偏見がなくなった、と言う人もいます。たしかにそうかもしれません。「みんなちがってみんないい」とよく言われますものね。だけど、私はこの言葉も嫌いなんです。

 「みんなちがってみんないい」と言うけれど、本当は誰だって、「みんなといっしょがいい」って思うんじゃないでしょうか。たとえば誰かに「私は不登校です」と言っても「みんなちがってみんないいんだから、あなたもそれでいいんだよ」と軽く流されることがある。すごく違和感を感じます。みんなといっしょのサポートが受けられないことや、みんなといっしょの楽しみを得られないことには目が向けられず、無責任に「ちがっててもいいよね」と言われる。それはおかしいと思うんです。

――僕は高校3年間不登校でした。今は簿記の勉強とバイトをしています。福岡に住んでいて、ときどき新聞社の活動に参加しています。僕は不登校になったことで「ふつう」の人に対する劣等感があります。同世代の人と自分を比べて、「なんてできてないんだろう」と思ってしまうんです。(山内)

 自分を認めてくれる人は、今は近くにいない、と思うかもしれないけれど、絶対にいます。自分のことを「なかなかよくやってるじゃん」と言ってくれる人を見つけて、その人の声を信じてみてください。

 それに、自分で自分を信じてあげることも大事ですよ。たとえば私が人に「私の知り合いで、不登校だったんだけど、今は資格の勉強もして、ときどき上京して活動してる人がいるよ」と言ったら「へえ、すごくおもしろい人だね」と言われると思うんです。「誰の話だろう」って顔してるけど、山内くんのことですよ(笑)。

 人は自分のことになると過小評価をしすぎるんじゃないかと思うんです。だから、「俺もけっこうがんばってるよな」と思うくらいがちょうどいいんじゃないでしょうか。

ポジティブさはどこから

――僕はすぐ考え方がネガティブになってしまうんですが、伊是名さんはどうしてそんなにポジティブなんですか?(山内)

 ネガティブになるときもたくさんありますよ。子どものころから、3カ月に1回は骨折して入院する、というような生活だったから、やりたいことがぜんぜんできなかったんです。楽しみにしていた旅行の前日に骨折したこともありました。そういうときは、ドーンと落ち込みます。でも、落ち込んでも何しても治るまで動けないのは変わらないんです。だから「仕方ないな」と思って、むしろ治ったあとでなにをしようか考えて、いろいろ妄想するんです。そしてそれをやることを楽しみにしていました。
 だから私にはつねにやりたいことがいっぱいあります。今は本を出したいし、出雲大社に旅行へ行きたい。私の場合「いずれやりたい」じゃないんです。だっていつ骨折するかわからないから、いつでも「今やりたい」なんです。

――今、生きづらい思いをしている不登校の人たちにメッセージをお願いします。(楢崎)

 こんなことを言うのは申し訳ないんですが「大人になったら意外と楽だよ」と。大人の社会では働くにしてもフレックスタイムやパートタイム勤務など、いろいろな勤務形態を選べます。でも学校にはそういうものがない。担任もクラスメートも学校自体も選べないですよね。私は10代よりも20代のほうが、20代よりも30代のほうが楽でした。大人になるにつれて自由度が増えていくし、経験を積んでいる分、自分に合った選択ができるようになります。だから「今が一番つらいときだよ、きっとそのうちよくなるよ」と伝えたいです。

――ありがとうございました。(聞き手・楢崎唯、山内太二郎、編集・茂手木涼岳)

(いぜな・なつこ)コラムニスト。1982年沖縄県生まれ。身長100cm、体重20kg。骨の弱い障害「骨形成不全症」を持つ。また右耳は難聴のため聞こえず、左耳も補聴器を使用している。現在、東京新聞・中日新聞にて連載「障害者は四つ葉のクローバー」を執筆するほか、webメディア「ハフポスト日本版」(https://www.huffingtonpost.jp/author/izena-natsuko/)にも連載中。公式ブログ http://blog.livedoor.jp/natirou/

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