文科省によると、小学校6年生と中学校1年生の不登校数は2・6倍の差がある(1万人→2万6000人)。中学校に入った途端、不登校が増えることを「中1ギャップ」とも言うが、今回は実際に中学校1年生の4月から学校生活に戸惑い、不登校になった相良まことさん(15歳・女性/仮名)にお話をうかがった。
――どんな学校生活を送っていましたか?
小学校はわりと楽しかったです。私は男子の友だちが多くて、マンガやゲームの話をよくしていました。マーチングバンドで全国大会に出場して賞をもらったり、学芸会で役を演じたのもいい思い出です。
しかし、中学になると環境がガラッと変わりました。教室では男女がわかれてしまって、男子は男子と、女子は女子としかしゃべらなくなりました。男子としゃべると「つきあっている」と噂されるので、話せなかったんです。でも私は女子が話す流行のブランドなどにまったく興味を持てなくて、いじられたりもしました。そのうち男子とも女子とも話すことができなくなり、いつも教室のすみで、ひとりで絵を描いていました。誰ともなじめず、疎外感を感じて、しだいに保健室登校になりました。
保健室では多少、気を休めることができました。しかし、中学2年の10月に、学校の都合で保健室が使えない期間があったんです。私は逃げ場所を失いました。そのとき「もう学校には行けないな」と思い、不登校になりました。
――学校へ行かなくなってみてどうでしたか?
「学校に行っていない私が外を出歩くなんて許されない」という思いから、ずっと家にこもっていました。「勉強しなきゃ」という強迫観念もつねにあったのですが、なかなか手につかない。24時間、後ろめたさでいっぱいでした。
親は、私が学校を休むことを許してくれました。それは本当にありがたかったと思っています。自分で自分を責めているときなども「もっと気を抜いていいんだよ」と何度も言ってくれました。
“気を抜いていい”それが難しい
しかし「気を抜いていいんだよ」は、私にとって悩んだ言葉でもありました。本当に気を抜いていいのか、そもそもどうやったら気を抜けるのか、まったくわからなかったからです。家でゲームをしていてもネットで動画を観ていても気持ちが休まらなくて、ずっと何かに追われているような毎日でした。とくに夜になるとつらい気持ちになることが多かったです。友だちもいないし、将来も不安で「これからどうなっちゃうんだろう」と思うと、恐怖に心が支配されるようで、夜通し泣いている時期もありました。
そんな私を救ってくれたのは、テレビの特撮番組でした。「○○レンジャー」というような戦隊ものの番組です。画面のなかでがんばっている俳優を見ると、不思議と自分も元気づけられ、気持ちが前向きになってきました。
また、勉強についても「わずかな時間でも毎日コツコツと」と思って生活していたんですが、結局それができずに自分を責める、ということをくり返していました。しだいに、勉強や規則正しい生活をがんばって「ふつう」にしようとしてもできない、ということがだんだんわかってきました。「もう自分はがんばるとか怠けてるとかそういうのではなく、がんばれないんだ、今は休む時期なんだ」と、あるとき開き直ったんです。それからは、肩の力が抜けて、楽になれたように思います。
今、不登校したころの自分に言葉を送るとしたら「しんどいなかで中2の10月までよくがんばったね」とほめてあげたいです。また「後ろめたさを感じる必要はないんだよ、今は休む時期なんだから、家で好きなことやっていいんだよ」と言ってあげたいですね。
――ありがとうございました。(聞き手・酒井伸哉、茂手木涼岳)
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