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9月1日の子どもの自殺に思う 不登校経験者・須永祐慈

2015年08月26日 12:29 by kito-shin
2015年08月26日 12:29 by kito-shin


 みなさん、花火大会やお祭りも終わりかけ、2学期が始まる時期。そろそろ「日常」に戻る現実を感じ、こころが"ざわついて”いませんか。

 1学期やそれ以前から、学校で嫌がらせや孤独になるようなこと、つらい気持ちを積み重ねた人は、この2学期がなにより不安で、考えるとドキドキして、緊張して、呼吸が浅くなって、夜、寝むれないのではと想像します。

 私は、小学校4年生の時、いじめを受けて学校に行かなくなりました。最初はいじめとは思わず、いたずらやちょっかいを受けました。そしてやられる回数が多くなり、クラスから孤立するようになりました。ゴールデンウィーク明けが、その一番のピーク。誰からも「距離を置いて見られる自分」となり、いじめは収まらず、私は体調を崩して「もうだめだ」と気持ちが打ちのめされました。その思いは30歳半ばの今になっても、こころのどこかに「古キズ」のようなものとして残っています。

 当時の私は「学校に行かないことはダメなことだから、行きつづけるしかない」としか考えられない毎日。行かなくなっても、苦しさが溜まり、打ちのめされるような思いが残りました。周りの理解には時間がかかったので、毎日、モンモンとひきこもっていたあの頃は、自己否定感の塊のような自分でした。

 その後私は、いじめ経験のち不登校となり2年半に家にいた後、フリースクールという新たな学びの場と出合いそこで育ち、その後を生きつづけています。そして私だけではなく、多くの人が「つらい思いをしているあなた」にメッセージを届けようとしています。いのちに替えてまで学校に行く必要はないよ、学校以外にも道はある、苦しい場から離れていいというメッセージが添えられています。「その後」を生きている私たちのメッセージが、少しでもなにかを感じてくれることを願っています……。

 でもしかし「孤独で苦しい毎日」な人たちを想像すると、いくら大人が「だいじょうぶだよ」とメッセージを送っても、すんなり受け入れる気持ちにはなれないのでは、とも考えてしまいます。私がそうでした。「逃げ場所なんかどこにもない!」「受け止めてくれる人なんかいない(んじゃないか)」「そう思う自分はだめだ」という言葉が聞こえてきそうな気がします。不安や苦しさで、常にネガティブな気持ちで、すべてむなしくて、どんな言葉も受け入れられない。もしそうだとしたら、私はとても胸が痛むし、無力さを感じます。

 でもそれでも、過去に経験した私は思います。私は、私ができることをしていこうと。

 ひとつめは、私の言葉でメッセージを送り続けること。受け止める姿勢を持ち続けること。

 どんなに孤独で苦しい状態で動けなくても、あなたはまだ心臓が動き、息をしている。そして「閉じ込めた思いや自分も気づかない感情」がある。ならば、一つの方法として、思いを「メモ」してみること。自分の声を「録音」してみること。その中で、自分の思いもよらなかった声や言葉に出会えたり「思いを出してはだめだ」と蓋をしていたりすることに気づくかもしれない。自分の今の状態や思いに気づき、それを誰かと共有するきっかけがあれば、なにかが動きだすかもしれません。

 家族や先生に言えないのなら、第3者につながる方法も、あります。私も活動の一部に関わっている子どもの電話「チャイルドライン」は、どんなことでも、ひみつは守りつつ話を聞いてくれる。それ以外にもインターネットを活用した相談や、誰かとつながる方法もある。そこから小さくても「生きる材料」を見つけられるかもしれません。あなたは、安心して生活する最低限の権利を持っています。つながれる場がいくつもあるのです。

 ふたつめは、子どもも大人も追い込まれることのない環境を作り続けること。

 マスコミなどの調査では「いじめはなくならない」という嘆きにも似た回答を多く見かけます。私も「"すぐには”いじめはなくならない」と実感しています。しかし、そこで絶望して動かないままでは「いじめがある学校」がなくならないし、苦しむ人は苦しみ続け、さらに苦しむ状況を「生み出し続ける」こととなってしまいます。

 苦しさを生む「学校空間」があるのなら、その学校を変えなくてはいけません。苦しさを生む「関係性や空気」があったら、それを変えたり離れて生きられたりする環境を作っていかなければいけません。「苦しむ場所しかない」のなら、その人が安心できる環境や場所を複数、作っていかなければなりません。

 そのためにできることを考えると、あまりにもいろいろあって、気が遠くなります。

 けれど一方で、子どもたちが苦しむ環境を変えようと、これまで活動してきた親や大人は少なくありません。そんな積み上げている人たちによって、少しずつ変わり始めていることも感じています。だからこそ「子どもが苦しまなくてすむ環境づくり」を私たちがさらに進め広げ、加速させなければいけません。

 その一つとして、いま私は「いじめ」に関する活動をしています。

 「ストップいじめ!ナビ」(http://stopijime.jp)には、子どもがすぐにつながれる情報を掲載したり、「あしたニコニコメモ」というフォーマットを公開したり、Q&Aを設けたりして、いますぐにできる情報をいろいろと載せています。

 また大人たちに向けて、いじめを止めるためにできる情報を、ウェブや講演、マスコミなどを通じて発信しています。このような情報を大人たちに共有するための呼びかけを行っています。

 いろいろ書きましたが、最後に言いたいことは、これでしょうか。

 まず「緊張で、硬く凝った体をゆるめるために、深呼吸してみませんか」、そして「少しでも安心できる所に身を寄せ、自分を休ませてあげて」。

 ほんのわずかでも「生きていていいかも」と思えるきっかけはある。安心して生きる場所を増やすために、どこかでつながりながら一緒に考えていきませんか。

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