著者は長年、公園緑地の建設に関わってきた研究者である。
その公園緑地が、犯罪空間となった宮崎事件を契機に、その後、環境造園学という観点から、酒鬼薔薇事件、京都日野小事件、新潟少女監禁事件、奈良富雄北小事件など、多くの子どもたちが被害者となった事件現場にはいって、周辺を調査している。本書は、これらの事件現場の環境を検証する〈現状編〉と、「子どもを加害者にしないための〈提言編〉の二部構成となっている。
現状編の内容から紹介していく。
酒鬼薔薇事件の現場となった中学校は、いわゆる学校群のなかに位置していた。しかし、それぞれが孤立するかのように建っており、自己の敷地内での完結性を求め、快適で安全な地域をつくる役割があるということが忘れられていたかのような状況であった。道路を行き交う人々の目線も届かず、中学校の敷地は道路との境界に3mほどの石組みで敷地が高くしてあった。
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